田中さんの資料その3
田中さんの資料その3
田中さんの資料その3
田中さんの資料その3
二つの作文のちがいを見つけよう
―「ある日型」と「いつも型」―
(一)竹馬のことを書いた二つの作文
たけうま 三年 よし田 みゆき
きのうのひる休みに、たけうまにのっていたら、たいらさんが、
「のれた。」
といいました。わたしが、
「なんぽ。」
ときいたら、
「じゅっぽ。」
といいました。
② わたしもちょうせんしたら、五ほあるけました。あんなちゃんが、
「すごい。」
といってくれたので、わたしはうれしくなって、どんどんつづけました。
③ そしたら、あんなちゃんが、
「あおのとびばこからピンクのとびばこまで
きて。」
といったから、わたしと平さんがいきました。
そしたら一回しっぱいして、二回しっぱいして、三回でやっといけました。つぎは、きょりをはなして、やってみたら、ひっかかってばかりでした。
④ あんなちゃんがたけうまの先生で、テストのれんしゅうをしました。そして、あんなちゃんが、
「あしたは、テストだよ。」
といいました。わたしは、れんしゅうしなくっちゃと思いました。
あしたになって、そうじがおわったらすぐにじぶんでつかっているやつをはやくとって、テストをうけたいなと思いました。ほかのやつだったらやりにくいから、はやくはしっていこうと思っています。
竹馬のれんしゅう
三年 小川 彩乃
① わたしは、いつも竹馬にのっています。先生に、
「竹馬にのってもいいんじゃない。」
といわれてから、友だちと、毎日のようにやっています。
② わたしは、すこし前から竹馬をやっていたから、友だちにやりかたとかもすこしおしえています。はじめは、友だちに、
「いいね。うまくできて。」
といわれていたけど、おしえているうちにみんなもうまくなってきました。
③ でも、みんなは、のる所を、横にむけてやっているけど、ほんとは、ぼうの上の方をすこし中にして、下の方を、ほんのすこしだけ外にひらくと、うまくのれます。そして、ぼうを、前の方にすこしななめにしてやらないと、うしろにひっくりかえってしまうのです。ぼうも、できるだけあっているものをえらびます。
④ このごろは、二十分休みになると、いつもきょうとう先生の所へいって、
「体育そうこのカギありますか。」
と言って、カギをかりて、体育そうこにかけていきます。すると、たいてい、友だちがきてまっています。
⑤ いつもたのしくなってくると、二十分休みのおわりのチャイムがなってしまいます。ああつまんないと思います。でも、昼休みがあるからいいと思います。そして、昼休みがおわると、あしたがあるからいい。あした、また竹馬をやろうと思います。それも毎日。毎日、毎日、そう思います。
この二つの作文は、三年生の子どもたちに、「最近したことで、心に残っていることでもよいし、自分が今思っていること、考えていることでもよい。なんでもよいから書きたいと思ったことを、一つえらんで、そのことを作文に書きましょう。」こういって書いた中から生まれた作品です。
そのときは、子どもたちがその時期、休み時間に竹馬にむちゅうになっていたことも知っていたので「竹馬で遊んだことでもよいし、むちゅうになって何かをしたことでもよい。」といって書いてもらったのです。そう言ったこともあってか、「竹馬のこと」について、4,5人の子どもが書いてきました。その中からえらんだ作品です。
二つの作文が生まれたとき、この二つの作品をつかって、「表現のちがい」について、学ばせられると考えました。
段落に分けてないところがあったり、文脈が少しみだれていたところもあったりしたので、本人を読んで、たしかめて、できあがったものです。子どもたちの学習のために役立てようと「教材化」したものです。読みやすいように、二つの作品を上下にレイアウトして一枚のプリントにして配布します。
この二つの作品の「ちがい」を比べさせて、文章表現力を身につけさせるための授業をしました。そのときの、おおよその展開のしかたをここに、紹介します。扱い方を工夫すれば、どの学年でも実施できます。(注1)
(二)二つの作品を使っての授業展開
(1)題の「ちがい」
子どもたちには、白紙の用紙、あるいはノートの真ん中に線を引かせて、上の作品と下の作品とを対比させながら、「ちがい」を見つけて、書いていくようにさせます。
そのメモのとりかたを確認する意味もこめて、「読んでみて、はじめに気がついたちがいについて発表してみようと」発問します。
すぐに教師の意図に反応してくれる子どももがいます。「はじめに」ということばに反応してこたえてくれます。「題がちがう」。書いた人がちがっています。ふたりは竹馬のことについて書いているけど、みゆきちゃんのほうは、たけうま」とひらがなで書いているけれど彩乃ちゃんの方は、漢字をつかっている。
こういった発言がでてきたら。それをちょっと整理しておこうね。」といって、板書します。教師も黒板の真ん中に、横線を引きます。そして、題がちがうんだね。上の作品の題は、とたずねて「たけうま」と書きます。そして、下の作品の題はと、ここでもわかりやすい質問をし、それをみんなに言わせながら板書していきます。そして、書き手の名前も確かめて書きます。
二つちがいが見つけられたね。一つは、題のちがい。そして、書いた人のちがい。そして、上下に分けた線の上部には①の作品のことを、下部には②の作品について書くことの理解を含めて、「題」「書いた人」を板書します。これを子どもたちにもうつさせて、ちがいを見つけたときのメモの取り方をわからせていきます。そして、時間をとって、気づいた「ちがい」を書き出させます。
(2)いろいろなちがいを整理する
①上の方が、漢字が少なくて、下の方は漢字が多く使われている。
②みゆきちゃんのほうが、「会話」の数が多い。彩乃ちゃんのほうが、少ない。
③みゆきちゃんは、竹馬が上手になってきて、ほめられてうれしかったことを書いているけど、彩乃ちゃんは、竹馬が上手で、楽しくって毎日やりたいということを書いている。
④上のほうは、たいらさんとかあんなちゃんと名前が書いてあるけれど、下は、「友だち」と書いている。
⑤みゆきちゃんは、竹馬の(乗り方)の練習中。彩乃さんは、竹馬の先生みたい。
次々に、発表されることを、教師は板書していきます。その際、黒板の全体の中でどのへんに何を書くか決めておきます。《題》《名前》《内容》《組み立て》《書き方(記述)》《いつのことか》《かかわり方》というように、頭の中に描いておきます。
そして、たとえば、③と⑤がでてきたところで、この二つのちがいは「何のちがい」かを考えさせます。むずかしいようだったら、これは、「書きたいことや気持ちのちがいだね」といって、「竹馬のこと」を書いていても、書きたいなかみ・内容(主題)のちがいであることを理解させます。そして、「題」「名前」の時と同じように、「内容」と板書して、何のちがいかを明確にするようにします。
(3)「書き方」のちがい
これまでの学習経験のちがいから、内容の面ばかり目がいく場合もあります。そういう時には、①や②や④の会話や漢字の数がちがうところなどにも着目させ、これは書き方、表現の仕方の違いであることに気づかせて、あらためて「文章の組み立て、記述のちがい」について考えさせます。
そして、⑥上の文章は、「出来事の順」に書いている。下のほうは、「そうではない」。ここでは、文章の書き方の「組み立て」である、時間の経過、したことの順に書いていることを見つけられたことを評価します。下の彩乃さんの文章は、どんな順に書かれているか考えさせます。この言い方がむずかしいようです。「出来事の順ではない」「時間の順には書いていない」「作者の考えた順に、書かれている」などと答える場合がありますが、一番わかりやすい言葉でまとめればよいでしょう。「時間の経過にそってないこと」をおさえることが大事なことなのです。
一文、一文のちがいについても目を向けます。上の文章は、文の終わりの表現の形(文末表現)が、「…しました。」「…しました。」と書かれています。下は「…ます。」「…しています。」と書かれていることを確かめます。
そして、「組み立て」とつなげて、上の文章は、できごとの順に「…しました。」「しました。」と書いている文章であること。そして、下の文章は、できごとの順ではなく、書いた人が考えた順に、「…です。」「…ます。」と書いている文章であることをおさえます。
高学年の場合には、文末の「…しました。」「…しました。」という書き方は、どんなときに使われるのかと問いかけます。すると、終わったことを表すので、これを「過去形」と呼ぶ場合もあることを知らせます。
「…です。」「…ます。」という文末表現は、説明するときに使われることから、「説明形」表現と言う場合もあること。また、「…です。」「…しています。」という形は、「…しました。」という過去形に対しては、現在形表現であること。「私はいつも竹馬をしています。」という表現でありこれからもするということから「未来形」表現であり、「現在・未来形」が使われているということも理解させるようにします。
(4)「かかわり方」のちがい
上の文章は、「きのうのこと」を書いているけれど、下の方の文章は、はっきりとした日のことでなく、「いつも」のことを書いている、ということにも、気づきます。
このときには、それを補うかたちで、教師が、次のような図を書きながら、説明をします。(右図)
こうした説明から、「ある日の」「一回限りのこと」として書いている文章と、「長い間にわたって」、「何度も、何度もあったこと」で、「いつもいつも」思っていること、考えていることを書いているところにちがいがあることを理解させます。
みゆきさんの書いた「たけうま」は、ある日の昼休み、言い換えると、「ある日の、ある時」に竹馬をしたとき。「この日一回だけのこと」を題材にして、うまくのれるようになってうれしかったこと。すなわち心が動いたことを思い出して、したことの順に、友達の話したことも入れながら「…しました。」「…しました。」と書いた文章ですねと、板書されたことがらをさしながらおさえます。
そして、こんどは彩乃さんの「竹馬」の作文は、「ある日」のことでなく、何日も何日もくりかえし竹馬をしたことで、気づいたこと思ったこと、考えるようになったことを、書きたいことの順序をきめて、考えた順にまとめて、「…です。」「ます」と書いた文章ですねと、こんなふうにまとめます。
(5)「名づけ」をする
この「かかわり方」のちがいを理解させたあとで、「ある日のこと」を書いた作文と、「いつものこと」を書いた作文とは、書き方に大きなちがいがあるので、名前をつけてみようと、さそいかけます。
「できごと作文」「したこと作文」「ある日型」「生活文」など、そういった言葉が上の文章には出てくるかもしれません。下の方では、「説明した文」「説明文」「いつも型作文」というような名前が出されたりします。その中の一つをとって、みんなで呼ぶ名前を決めます。「名づけ」をします。
「ある日型」としたり、「ある日のこと」作文、とでも名付けたら、「ある日型の作文にぴったりの歌があるでしょう。」と言ってみます。「ある日、ある日」と節を付けて歌ってあげれば、子どもたちも歌い出します。「…もりの なか くまさんに、であった はなさく もりの みち くまさんにであった」。二番も歌います。「ところが あとから くまさんが ついてくる とことことことこと」。そして三番。ここには会話も入ってきます。「おじょうさん おまちなさい、…」。こんな具合にみんなで歌います。これは「もりの くまさん型」作文とも名なづけることができます。
では、「いつも型」の作文の歌は、というと「いつもの駅で、いつもあう、セーラー服の おさげがみ もう くること もうくるころ 今日も まちぼうけ」と歌います。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが坂本九の「明日がある」の歌です。でも、これは古いし子どもたちは知りません。いまだったら「手のひらを太陽に」がいいでしょう。「ぼくらはみんな 生きている」を「生きていた」と過去形になおしたら大変です。
ちょっと脱線?をしながらも「ある日型」と「いつも型」のちがいを意識づけるのです。
(6)どちらのほうがいい作文?
さて、二つの文章、「どっちの方がいい文章だと思いますか。」と問いかけたときには、どんなこたえがかえってくるのでしょう。上の文章のほうは名前がはいっていたりして具体的に書いているのでやさしい。下の方が竹馬ののりかたを説明していてなんだか気持ちがはっきりしないように思える。けれども、どっちともいえない。子どもの多くは、聞かれたらこまってしまいます。
そこで、二つの作文は、それぞれ書き表したいことがちがっているのだから、どちらがよいと一言ではいえないと先生も思うんだよ、というと、子どもたちは安心します。
一概に、作文の評価はできるものではないし、あらかじめあてをはっきりさせて、書かせたものではないからです。
(三)学習の「まとめ」
こうして文章の書き方についての授業をしたあとは、「まとめ」が大切です。板書を写真に撮っておき、それをもとにして、次のような観点から表にして整理し、プリントして子どもたちに定着させます。《作文の題・書いた人・書きたいこと・内容・いつのことか・文章の組み立て・文末の表現・文章の型》
そのあとの作文の学習では「ある日型」「いつも型」が、文章を書くときのキーワードになって、有効に展開されることになります。(注2)
ところで、「ある日型」「いつも型」、一斉指導で授業を展開して子どもたちに書くように指導するときは、どちらを先に指導するほうがよいのでしょう。
〈注1.2〉については詳しくは、『作文指導のコツ② 中学年』(田中定幸著 子どもの未来社)をご覧ください。
《参考にしてほしい本》
『みんなの綴方教室』(国分一太郎 新評論 1973年)
『現代つづりかたの伝統と創造』(国分一太郎 百合出版 1982年)
『作文名への道 』(田中定幸・今井成司・榎本豊編著 本の泉社 2015年)
『作文名への道 三・四年生』(田中定幸・今井成司・榎本豊編著 本の泉社 2015年)
『さくぶんめいじん・小学1・2年生』(今井・榎本・田中編著 本の泉社 2021年)
『作文指導のコツ①低学年』(田中定幸著 子どもの未来社 2010年)
『作文指導のコツ②中学年』(田中定幸著 子どもの未来社 2010年)
『作文指導のコツ③高学年』(田中定幸著 子どもの未来社 2018年)
国分一太郎没後40年記念
書くこと・作文・つづり方
報告-3
「いつも型―Ⅰ」(説明風に書く)
「いつもあること」(説明文)を書くときの指導
田中 定幸
(国分一太郎「教育」と「文学」研究会)
《はじめに》
「ある日、ある時のこと」「何日もつづいた」その体験に、子どもたちは心をうごかしています。その出来事からたくさんのことを学んでいます。考えたりもしています。
ある時に起こった一つの出来事を「一回限りのこと」としてとらえ、その体験をふりかえって、時間の経過そって書いた文章をより鮮明にするために、「ある日型」の文章、という名付けをしてきました。
ある日ある時に起きた比較的短いあいだのできごとを、事実にそってより具体的に書いた文章を「ある日型―Ⅰ」としました。一つの出来事でもありながら、その出来事が、やや長いあいだ、長いあいだにわたって続いたとき、そのできごとの経過にそって書いた文章を「ある日型―Ⅱ」としました。
けれども、子どもたちが、日々の生活の中で喜怒哀楽を感じ、学び、考え、自分の思いや表現したくなることは、それだけではありません。やや長いあいだ、長いあいだにわたって、くりかえし、見聞きし、体験したこと。あるいは経験していることに対しても、喜びを感じ、怒りを感じ、悲しさや寂しさ、そして楽しさを感じています。考えたり、学んだりもしています。
また、ものごとをいろいろな角度から分析したり、総合したりして考えをつくり出しています。よく知っている、ものやことにたいして、友だちやみんなに、あるいは広く世の中に語りたいとおもうことがあります。
そうしたときに生まれてくる文章表現の形を「いつも型」の文章と名づけました。
この「いつも型」の文章表現も「いつも型―Ⅰ」「いつも型―Ⅱ」と、二つに分けました。
ここでは、「いつも型―Ⅰ」の文章の特色を明らかにしました。そして、どの子にも「いつも型―Ⅰ」の文章表現力をつけるために、「表現の過程」にそって、どのような励ましと指導をしていったらよいかを書いてあります。
そこで、どのようなことを学び、どのような力が育つかについて書いてあります。「ある日型」の指導と合わせて読んでいただけたらさいわいです。
一 「いつも型-1」の文章とは
(一)ここで書く作品は、「いつもあること」「よく知っていること」をテーマにして書きます。
やや長い間にわたって、ずっと長い間にわたって、何度もなんども体験していること、人やものやことについて、いつも感じていること、いつも考えていることを、「ひとまとまりの文章」に表現できる力をつけるための指導です。あるいは、よく知っているものやこと、いつももちつづけている夢や願い、意見などをまとめて説明するように書く力をつけるための指導です。
分析したり、総合をしたりする中から生まれてきます
子どものがわからいえば、長い間にわたってつづいてきた体験を、時間の経過にそってふりかえるのではなく、ことがらごとにまとめたり整理したりする中から生まれてきた感情の表現です。共通するところ、違うところをくらべたりという、分析をしたり総合したりするなかで生まれてくる思いや考えを、文章に書く力をつけるための学習です。
かわいい妹
林 勇治
① 僕には、妹がいます。名前は「恵美」で、今は三才です。僕とは、年が七才もちがいます。たん生日は十二月三十一日でおおみそかの日です。まだ幼稚園には、行っていません。
② 妹は、となりの坪田まなみちゃんと仲がいいです。いつもいつもさそって遊んでいます。つみきで遊んだり、おままごとみたいなことをして遊んだりしています。たまには物のとりっこをしたりします。
③ けれども、そのまなみちゃんよりか、せが小さいです。体も小さい方です。うちでは、生まれた時、お兄ちゃんと恵美の体が小さくて、僕だけ大きかったです。だからもっと大きくなってほしいです。
妹は、ふだんはすなおでかわいいけれど、生意気な時があります。それは、自分がないしょでテレビを見ていて、僕達もいて、面白くない番組だと、
「お兄ちゃんテレビ見てる。」
とお母さんに言うので、生意気です。そんな時には、かわいくありません。
時々、僕達のやる事をまねしたりします。台所以外の場所で何かを食べるまねをよくしてこまります。いい事はまねしてほしいけれど、悪い事はまねしないでほしいです。
でも、妹にとって、お兄さんがいて、いいこともあります。それは、指で数字をあらわすと、
「一、二、三、四.」
と言えたりできるのは、ふだんから、僕達のまねをよくするからだと思います。
④ 妹がいて、僕達にとっていいこともあります。お母さんと、お買い物に行った時、お母さんが恵美の分のお菓子だけを買う時、恵美が僕達の分までねだって、買ってもらう時があります。こんな時には、とてもかわいらしく感じます。それに恵美だけのお菓子がある時に、たまに、犬のふりをして、
「ワン、ワン。」
と言ったりすると、
「はい、ワンちゃん。」
といって、僕にお菓子をくれる時があります。そういう時にもかわいく感じます。
⑤ 妹は、とっても公園が好きです。
「公園好き。」
と聞くと、
「大好き。」
と言います。
だから、時々僕が、遊びに行くのを見られて、
「どこ行くの。」
と聞かれて、
「友達のところ。」
と言うと、恵美が、
「恵美ちゃんも行きたいな。」
と言うので、
「じゃあ、後で、公園に行こう。」
と言って、
「うん。」
と返事をさせて、いつもごまかしてしまうのです。
なぜ、公園が好きかというと、遊ぶものがいっぱいあるからだと思います。でも、一人でいろんな所に行けないので、かわいそうだと思います。
⑥ところで、僕と妹とは似ているところがあるとよく言われます。僕と恵美の目がよく似ていると言うのです。やっぱり兄妹だから似ているのだと思います。
⑦あと、上が二人男なので、どっちかというと男っぽいので、もうちょっと女らしくしてほしいと思うことがあります。たまに、
「おまえ、なんだ。」
なんて、すごい言葉を使うので困ります。
でも、時には、女らしい時があります。それは、お母さんらしく、悪いことをしている僕とお兄ちゃんに注意する時です。やさしくお母さんみたいに注意するので、僕はおもわずなおしてしまいます。そういうやさしさは、お母さんのまねをしているのかもしれません。そんなところも妹のかわいいところです。
(段落につけている番号は、これからの説明に使うために、つけたものです。)
(二)この指導の前提として考えておくこと
「ある日型」の指導のあとにとりくみます
「ある日型・1」の文章とくらべてみることも一つの方法です
三年生あたりから
(三)「いつもあること」「よく知っていること」を、構成を考えて書くときの指導題目
どの子どもにも「いつも型―Ⅰ」の文章表現力をつけるために、表現の過程にそって、一斉に指導するときには次のような指導題目をたてることになります。
指導題目をよんで、その結果、子どもたちがどんな文章を書くことになるかを想像してみると、指導の方向性も見えてきます。
*今自分が大切にしているもの、かわいがっているものが、どんなものか読む人によくわかるように書こう。(二年~)
*いつもしていること、見ていることを、みんなに知らせるように書こう。(三年~)
*身のまわりの人のことで、いつも思うこと、考えかんじていることをまとめて説明するように書こう。(三年~)
*いつもしていること、見ていることで、こう思うということを、まとめて説明するように書こう。(三年~)
*自分のことでいつもいつも感じていること、考えていることをはっきりさせ、ことがらをよく整理して、説明するように書こう。(三年~)
*「ぼくのくせ」「わたしのあだな」などについてどう考えるか、考えをよく整理して組み立てを考えて書こう。(三年~)
*いつもいつもしていること、見ていることで、こう思う、こう考えるということを説明するように書こう。(四年~)
*いま私は、このことに熱中している。このことをぬきにして、いまの私はかたれないということを、ことがらをよく整理して文章を書こう。(四年~)
*友だちや先生について、いつも考え感じていることを、組み立てを工夫して、よくわかるように書こう。(四年~)
*いつもいつもしていること、見ていること、考えていること、感じていることを、主題にあった組み立てを考えて、まとめて説明するように書こう。(五年~)
*なんどもなんども同じような体験を繰り返すたびに、いつもいつもこう思う、こう考えるということをよくまとめて書こう。(五年~)
*今、持っている夢や願いを、よく整理して、読み手にきちんと伝わるように書こう。(五年~)
*世の中のことで、いつもいつもこう感じている、こう考えている、こんな願いをもっているということを、主題のはっきりした文章に書き表そう。(五年~)
二 「いつも型-1」の文章を書くときの指導の展開
(1)いつも見聞きしていることに目をむける……表現意欲の喚起の指導
日々の生活のなかでも「いつもあること」を話題に
導入にあたっては
話し合いの中で意欲を高めます
(2)いつも見たり、聞いたりしていることを……取材・題材の指導
いつも見聞きして、思っていること
子どもたちに「いつも、いつもしていること、見ていること、思っていること」にはどんなことがあるかを発表させます。そして、それを整理して、つぎのようなことがあることをたしかめます。
◇今 自分が熱中していること
しゅみ
たいせつにしているもの、生きもの
◇いつもいつもしていること
勉強のこと
手伝い
◇いつもいつも通っているじゅく、ならいごと
◇自分のからだのこと
くせのこと
◇身近な友だちのこと
家の人
先生のこと
◇自分の家のこと
学級や学校のこと
住んでいる町のこと
◇目にしている自然のこと
◇近所であった出来事
世の中のこと
◇その他のこと
こういう中から、題材を一つえらんで「まとめて説明するように書こう」とよびかけます。
むずかしい題材もあります
よりテーマを明確に
◇「友達のことを書こう」「先生のことを書こう」「あなたをささえてくれている人がどんな人か作文に書いてみよう」「いつもいつもしていること、見聞きしていることを題材に選ぼう」「何度もなんどもおなじような出来事にであったことを書こう」「いつもいつもこう思うということを作文に書こう」「いつも考え、感じていることを題材に選ぼう」といった言葉が、ここでの指導語になります。
(3)書き手の「考え」で決まる構成……構成・構想の指導
必要なことがらのえらびかたを学ばせます
作品を使って学ばせることも
参考作品を読んで、どんなことがらをえらんで書いたらよいかを学ばせることもできます。
先に例示した『かわいい妹』の作品では、段落毎に番号をふっておきましたが、それぞれの段落に「小見出し」をつけます。「小見出し」をつけながら、段落毎に書かれていることがらがどんなことかをつかませます。
「かわいい妹」であれば、次のようになっています。
①妹の年齢・名前
②妹の中のよい友達
③妹の特ちょう
④妹のいいところ
⑤妹の好きな場所
⑥妹と似ているところ
⑦妹への思い
いつもいつもかわいく思っている妹のことを読み手にわかってもらうために、こんなことがらをあげているということを確かめるわけです。そして、自分が書くときには、どんなことがらをえらんだらよいかを考えさせます。
「時間の順」ではないことを確かめます
◇ここでは、「いろいろな観点から考えて、大切なことがらを選び出しなさい」「ことがらをまとめて整理しなさい」「組み立ては、時間の順ではないこと」「読み手によく伝わるように、ことがらの順序を考えなさい」「自分の考えをよくまとめて、考えの形で組み立てていくのです」といった指導語がつかわれます。
(4)まとめて「です」「ます」と書いていく……記述・叙述の指導
「いつも型」の文章を書くときには、文の終わりである文末の表現が「すぎさらずの形」、「現在・未来形」が多く使われることをおさえます。そして、文脈がよくとおるように、文と文、段落と段落をつなぐ言葉にも注目させます。
説明から「書き出し」ている場合が多く見られます
よくつかわれることばにも注目させます
ここでは、「時間の順序にそって書く時」に多く使われた、「そして」「それから」「その時」のような順接的なつなぎことばの数がへってきます。
並列的に使われる、「また」などが多く使われます。「しかし」「けれども」「ところが」といった逆接的なつなぎことばがつかわれたり、「ところで」と、話や観点をかえるためにつかうときの「ところで」などもつかわれたりします。そのほか、「このように」「こんな時には」「こんな時にも」というコトバや、「いつもいつも」「よく」というコトバなどがつかわれていることも、作品を読むなかで、とりあげていきます。
こうしコトバが「くりかえし体験していること」をまとめて説明していくうえで必要とされるコトバであることも気づかせることで、しっかりとことがらを説明しきる力となっていきます。
会話はくり返されているように書くようにします
「むすび」はあまり大げさにならないようにします
◇ここでの指導語は、「ことがらごとによくまとめて書こう」「読み手を考えて、『~です』『~ます』とはっきりいいきって書こう」「つなぎことばに注意して書こう」「いつものこととして書きましょう」「いつも言うように書きましょう」「ここでも、物の色、形、大きさ、数量、性質などはハッキリ書こう」「『書き出し」や『むすび』方についても考えよう」と具体例を出したあとで呼びかけるようにします。
(5)主題が書ききれているかをたしかめます……推敲の指導
主題にそって読み直しをさせます
文末表現をたしかめます
「推考の授業」としてとりあげることも考えられます
◇「何を伝えたかったのかたしかめましょう」「まだ説明がたりないことはありませんか」というような主題をふりかえらせて、選んだことがらや構成がこれでよいかをふりかえらせる指導語が必要です。
また、「『~です』『~ます』とまとめて説明しているか確かめましょう」。過去形表現が無意識に使われていないかをたしかめるために「『~した』『~しました』と書いたところはそれでよいかたしかめよう」とくりかえし言ってあげることも大切です。
(6)ねらいにそった作品を読み合う……鑑賞の指導
この指導のまとめとして、また今後の課題としてつぎのような点について、作品を鑑賞するなかで、気づかせるようにします。
①いつもいつもくりかえし見聞きしていることを題材にえらんでいること。
②その子にあった適切な題材をえらんでいること。
③学級全体の取材、題材化の傾向と今後の課題。
④この種の文章は「考えの形」の文章構成になってくることの確かめ。
⑤記述・叙述の面では、「現在・未来形」である「すぎさらず」の文末表現が多くとられていること。
⑥推考(推敲)によっての作品の高まり。
⑦書かれている内容のすばらしさ。とらえている内容のねうちについて。
⑧ねうちある題材をとらえている書き手の生活のしぶりのよさ。
⑨すぐれた表現を生み出すことが出来たその背景、根拠。
子どもたちが書き上げた作品を、クラスの友だちの前で、できるだけたくさんの作品を読み合う授業をすることです。そして、右にあげたようなよさを、作品のなかからみんなで見つけ合う時間をつくるのが「鑑賞の授業」の基本です。
ねらいにあった作品をとりあげるだけでなく、一人ひとりの子の成長と合わせて作品を読み合えるような工夫も必要です。
三 「いつも型」の文章を書くことで育つ「力」
(一)「いつもあること」「よく知っていること」を書くことで育つ認識力
「関係」をとらえる力が育ちます
・ものごとをくらべてみる。
・似ているところをとらえる。
・ちがうところをみつける。
・同一と差異を区別する。
・共通するものをみつける。
・特徴としてとらえる。
・分類してみる。
・いろいろな観点からとらえる。
・部分や全体としてとらえる。
・総合的にとらえる。
こうした、関連づけてものごとをとらえようとする、心のはたらき(「認識の方法・操作のしかた」)が意識化され、またきたえられるのです。
マクロにとらえる力が育ちます
ものやことへのより深い理解のために役立ちます
(二)「いつもあること」「よく知っていること」を書くことで育つ表現力
説明風に書く力が育ちます
・「いつもあること」「よく知っていること」への興味・関心
・「いつもあること」「よく知っていること」を題材として選ぶ力
・時間の経過にそわない「考えの形」の構想への理解と構成力
・まとめて説明するように「です」「ます」「だ」「である」と説明風に書く記述力
・ことがらごとにまとめて、段落を形成する力
・「しかし」「けれども」「また」というような接続詞の使い方
・主題にそって、文章を読み直す力
・文末表現への注意力
「いつも型」の文章を書くことを、どの子にも体験をさせ、こうした表現力の基礎を身につけるのです。ここで、育った表現力は、この先、事実にもとづいた「論文」を書くときの基礎になることは言うまでもないことです。
いつも型・Ⅰ「「いつもあること」「よく知っていること」を作文に書かせるときのポイント
①くりかえし見たり聞いたりしたこと、体験したことを、題材にえらぶこと。
②書きたいこと(主題)に、関係があることをえらびだすこと。
③ことがらごとにまとめること。
④出来事の順ではなく、書き手の「考え」による構成にすること。
⑤まとめて説明するように「です」「ます」、「だ」「である」と書き進めること。
⑥「けれども」「また」など、はっきりするつなぎことばを使うこと。
⑦主題にそって、たりない説明がないか、読み直す。
⑧「した」「しました」と書いたところは、それでよいか確かめること。
国分一太郎没後40年記念
書くこと・作文・つづり方
―子どもに「書くこと」「つづること」の復活をー
―国分一太郎先生から学んだこと、今に生かしたいことー
「二つの作文のちがい」(「ある日型」と「いつも型」)
子どもに「文章観」を持たせる指導
田中 定幸
(国分一太郎「教育」と「文学」研究会)
日本の子どもたちの書く力(文章表現力)をささえてきたのが生活綴方の文章表現指導でした。生活
綴方の実践では、あくまでも、子どもたちの自主性・主体性をだいじにしながらも、すべての子どもたち
に、「豊かでたしかな文章表現力」を育てるには、ときには積極的に書くことを励ますだけではなく、その
結果生まれた作品を文集にしたりして、読みあうことも大切にしてきました。
そして、子どもたちが、どのような文章を書くことが、表現力だけでなく、ものの見方、考え方、あるい
は認識のしかたも身につけ、人として成長させることになるかを、考え、実践と研究を積み重ねてきまし
た。
そうしたなかでて、子どもたち書いてくる作品には、その意欲・関心から、また題材やその題材とのか
かわりかたのちがいから、その内容にふさわしい「書き方」をしていること見つけました。そこには、文章
の組み立てや記述の表現についても違いがあり、文章の「形態」、あるいはいくつかの「型」に分けられ
ることに気づきました。
そして、つぎのように、考えるようになりました。
わたしたちは、子どもたちに、さまざまな物のとらえかたをさせるためにも、将来におけ
る文筆的活動の準備のためにも、つぎのような文章を書くことになれさせなければならない
。
1 過去にあったことを、そのときの考や感じとともに「……した……した」「しました
……しました」と書いた文章。
2 過去にあったことを、そのときの考や感じとともに「……している……している
」「……しています……しています」と書いた文章。
3 いま起こっていることを、そのときの考えや感じとともに「……している……している
」「……しています……しています」と書いた文章。
4 やや長い間にわたって起こっていること、存在していることを、それについての考や感
じとともに、「……である……する」「……のです……します」と説明風に書いた文章
。
5 特定の相手に向けて、何かについて、「……してください」「……ですか」「……しよ
うではないか」と呼びかける形の文章。(注―)
として、こどもの書く文章には、5つの形態(形体)があり、これを思いのままに書けるようにしようということ
になりました。
そして、これまでも文章の書き方のもっとも基礎になると言ってきた⑴のような、ある時、ある所で、す
でにあったできごと、それについて考えたこと・感じたことを過去のこととして書きつづる形(した、した文
)をだいじにするだけでなく、⑷の「長い間にわたって、経験したり、考えたり、感じたりしていることをまとめ
て説明風に書く文章も生活綴方で書く文章の基礎になる表現として、どの子にも、こうした文章を書ける
ようにしようにしなければならないということになりました。
私は、長いこと生活綴方の実践を重ねてきましたが、こどもが書きたいことを書きたいように書くという
自主性・主体性をだいじにしながらも、どの子にも、「過去にあったことを思いのままにかききる力」、また
いつも考え、感じていることを「まとめて説明風に書く力」もつけたいと考えてきました。
そして、ここでいう⑴と⑷のように、 「文章はその書き方によって、大きく、二つに分けられる」というこ
とを子ども知らせておくことも、文章を書く上でも、また、生活をする中でも、大事なことではないかと考
えるようになりました。それが、「二つの作文のちがいを見つけよう」という取り組みでした。
その実践は、「生活の中でも、こころに残っていることを書こう」と、こどもたちたちに「書きたいと思うこ
とを書いてごらん」ということからはじまりました。そうして書いもらったなかから、つぎの二つの作文の作
文をみつけて、これをつかって、「作文には、その書き方のよっておおきく二つにわけられる。そこには、
2
どんな違いがあるのだろう」という「問い」の授業をおこなったのです。
二つ
の作
文のちがいを見つけよう
―「ある日型」と「いつも型」―
(一)竹馬のことを書いた二つの作文
たけうま 三年 よし田 みゆき
1 きのうのひる休みに、たけうまにのっていたら、たいらさんが、
「のれた。」
といいました。わたしが、
「なんぽ。」
ときいたら、
「じゅっぽ。」
といいました。
② わたしもちょうせんしたら、五ほあるけました。あんなちゃんが、
「すごい。」
といってくれたので、わたしはうれしくなって、どんどんつづけました。
③ そしたら、あんなちゃんが、
「あおのとびばこからピンクのとびばこまで
きて。」
といったから、わたしと平さんがいきました。
そしたら一回しっぱいして、二回しっぱいして、三回でやっといけました。つぎは、きょりをはなして、
やってみたら、ひっかかってばかりでした。
④ あんなちゃんがたけうまの先生で、テストのれんしゅうをしました。そして、あんなちゃんが、
「あしたは、テストだよ。」
といいました。わたしは、れんしゅうしなくっちゃと思いました。
あしたになって、そうじがおわったらすぐにじぶんでつかっているやつをはやくとって、テストをうけた
二つの作文のちがいを見つけよう
3
いなと思いました。ほかのやつだったらやりにくいから、はやくはしっていこうと思っています。
竹馬のれんしゅう
三年 小川 彩乃
① わたしは、いつも竹馬にのっています。先生に、
「竹馬にのってもいいんじゃない。」
といわれてから、友だちと、毎日のようにやっています。
② わたしは、すこし前から竹馬をやっていたから、友だちにやりかたとかもすこしおしえています。はじ
めは、友だちに、
「いいね。うまくできて。」
といわれていたけど、おしえているうちにみんなもうまくなってきました。
③ でも、みんなは、のる所を、横にむけてやっているけど、ほんとは、ぼうの上の方をすこし中にして、
下の方を、ほんのすこしだけ外にひらくと、うまくのれます。そして、ぼうを、前の方にすこしななめにし
てやらないと、うしろにひっくりかえってしまうのです。ぼうも、できるだけあっているものをえらびます。
④ このごろは、二十分休みになると、いつもきょうとう先生の所へいって、
「体育そうこのカギありますか。」
と言って、カギをかりて、体育そうこにかけていきます。すると、たいてい、友だちがきてまっています。
⑤ いつもたのしくなってくると、二十分休みのおわりのチャイムがなってしまいます。ああつまんないと
思います。でも、昼休みがあるからいいと思います。そして、昼休みがおわると、あしたがあるからい
い。あした、また竹馬をやろうと思います。それも毎日。毎日、毎日、そう思います。
この二つの作文は、三年生の子どもたちに、「最近したことで、心に残っていることでもよいし、自分が
今思っていること、考えていることでもよい。なんでもよいから書きたいと思ったことを、一つえらんで、そ
のことを作文に書きましょう。」こういって書いた中から生まれた作品です。
そのときは、子どもたちがその時期、休み時間に竹馬にむちゅうになっていたことも知っていたので「
竹馬で遊んだことでもよいし、むちゅうになって何かをしたことでもよい。」といって書いてもらったのです
。そう言ったこともあってか、「竹馬のこと」について、4,5人の子どもが書いてきました。その中からえら
んだ作品です。
二つの作文が生まれたとき、この二つの作品をつかって、「表現のちがい」について、学ばせられると
考えました。
段落に分けてないところがあったり、文脈が少しみだれていたところもあったりしたので、本人を読ん
で、たしかめて、できあがったものです。子どもたちの学習のために役立てようと「教材化」したものです
。読みやすいように、二つの作品を上下にレイアウトして一枚のプリントにして配布します。
この二つの作品の「ちがい」を比べさせて、文章表現力を身につけさせるための授業をしました。そ
のときの、おおよその展開のしかたをここに、紹介します。扱い方を工夫すれば、どの学年でも実施でき
ます。(注1)
(二)二つの作品を使っての授業展開
(1)題の「ちがい」
子どもたちには、白紙の用紙、あるいはノートの真ん中に線を引かせて、上の作品と下の作品とを対
比させながら、「ちがい」を見つけて、書いていくようにさせます。
そのメモのとりかたを確認する意味もこめて、「読んでみて、はじめに気がついたちがいについて発
表してみようと」発問します。
すぐに教師の意図に反応してくれる子どももがいます。「はじめに」ということばに反応してこたえてく
れます。「題がちがう」。書いた人がちがっています。ふたりは竹馬のことについて書いているけど、みゆ
きちゃんのほうは、たけうま」とひらがなで書いているけれど彩乃ちゃんの方は、漢字をつかっている。
こういった発言がでてきたら。それをちょっと整理しておこうね。」といって、板書します。教師も黒板の
真ん中に、横線を引きます。そして、題がちがうんだね。上の作品の題は、とたずねて「たけうま」と書き
ます。そして、下の作品の題はと、ここでもわかりやすい質問をし、それをみんなに言わせながら板書し
ていきます。そして、書き手の名前も確かめて書きます。
二つちがいが見つけられたね。一つは、題のちがい。そして、書いた人のちがい。そして、上下に分
けた線の上部には①の作品のことを、下部には②の作品について書くことの理解を含めて、「題」「書い
た人」を板書します。これを子どもたちにもうつさせて、ちがいを見つけたときのメモの取り方をわからせ
ていきます。そして、時間をとって、気づいた「ちがい」を書き出させます。
(2)いろいろなちがいを整理する
①上の方が、漢字が少なくて、下の方は漢字が多く使われている。
②みゆきちゃんのほうが、「会話」の数が多い。彩乃ちゃんのほうが、少ない。
③みゆきちゃんは、竹馬が上手になってきて、ほめられてうれしかったことを書いているけど、彩乃ち
ゃんは、竹馬が上手で、楽しくって毎日やりたいということを書いている。
④上のほうは、たいらさんとかあんなちゃんと名前が書いてあるけれど、下は、「友だち」と書いている
。
⑤みゆきちゃんは、竹馬の(乗り方)の練習中。彩乃さんは、竹馬の先生みたい。
4
次々に、発表されることを、教師は板書していきます。その際、黒板の全体の中でどのへんに何を書
くか決めておきます。《題》《名前》《内容》《組み立て》《書き方(記述)》《いつのことか》《かかわり方》とい
うように、頭の中に描いておきます。
そして、たとえば、③と⑤がでてきたところで、この二つのちがいは「何のちがい」かを考えさせます。
むずかしいようだったら、これは、「書きたいことや気持ちのちがいだね」といって、「竹馬のこと」を書い
ていても、書きたいなかみ・内容(主題)のちがいであることを理解させます。そして、「題」「名前」の時と
同じように、「内容」と板書して、何のちがいかを明確にするようにします。
(3)「書き方」のちがい
これまでの学習経験のちがいから、内容の面ばかり目がいく場合もあります。そういう時には、①や②
や④の会話や漢字の数がちがうところなどにも着目させ、これは書き方、表現の仕方の違いであること
に気づかせて、あらためて「文章の組み立て、記述のちがい」について考えさせます。
そして、⑥上の文章は、「出来事の順」に書いている。下のほうは、「そうではない」。ここでは、文章の
書き方の「組み立て」である、時間の経過、したことの順に書いていることを見つけられたことを評価しま
す。下の彩乃さんの文章は、どんな順に書かれているか考えさせます。この言い方がむずかしいようで
す。「出来事の順ではない」「時間の順には書いていない」「作者の考えた順に、書かれている」などと
答える場合がありますが、一番わかりやすい言葉でまとめればよいでしょう。「時間の経過にそってない
こと」をおさえることが大事なことなのです。
一文、一文のちがいについても目を向けます。上の文章は、文の終わりの表現の形(文末表現)が
、「…しました。」「…しました。」と書かれています。下は「…ます。」「…しています。」と書かれていること
を確かめます。
そして、「組み立て」とつなげて、上の文章は、できごとの順に「…しました。」「しました。」と書いてい
る文章であること。そして、下の文章は、できごとの順ではなく、書いた人が考えた順に、「…です。」「…
ます。」と書いている文章であることをおさえます。
高学年の場合には、文末の「…しました。」「…しました。」という書き方は、どんなときに使われるのか
と問いかけます。すると、終わったことを表すので、これを「過去形」と呼ぶ場合もあることを知らせます。
「…です。」「…ます。」という文末表現は、説明するときに使われることから、「説明形」表現と言う場合も
あること。また、「…です。」「…しています。」という形は、「…しました。」という過去形に対しては、現在
形表現であること。「私はいつも竹馬をしています。」という表現でありこれからもするということから「未来
形」表現であり、「現在・未来形」が使われているということも理解させるようにします。
(4)「かかわり方」のちがい
上の文章は、「きのうのこと」を書いているけれど、下の方
の文章は、はっきりとした日のことでなく、「いつも」のことを書
いている、ということにも、気づきます。
このときには、それを補うかたちで、教師が、次のような図を
書きながら、説明をします。(右図)
こうした説明から、「ある日の」「一回限りのこと」として書いて
いる文章と、「長い間にわたって」、「何度も、何度もあったこ
と」で、「いつもいつも」思っていること、考えていることを書い
ているところにちがいがあることを理解させます。
みゆきさんの書いた「たけうま」は、ある日の昼休み、言い
換えると、「ある日の、ある時」に竹馬をしたとき。「この日一回
だけのこと」を題材にして、うまくのれるようになってうれしかっ
たこと。すなわち心が動いたことを思い出して、したことの順
に、友達の話したことも入れながら「…しました。」「…しました
。」と書いた文章ですねと、板書されたことがらをさしながらお
さえます。
そして、こんどは彩乃さんの「竹馬」の作文は、「ある日」のことでなく、何日も何日もくりかえし竹馬を
したことで、気づいたこと思ったこと、考えるようになったことを、書きたいことの順序をきめて、考えた順
にまとめて、「…です。」「ます」と書いた文章ですねと、こんなふうにまとめます。
(5)「名づけ」をする
この「かかわり方」のちがいを理解させたあとで、「ある日のこと」を書いた作文と、「いつものこと」を書
いた作文とは、書き方に大きなちがいがあるので、名前をつけてみようと、さそいかけます。
「できごと作文」「したこと作文」「ある日型」「生活文」など、そういった言葉が上の文章には出てくるかも
しれません。下の方では、「説明した文」「説明文」「いつも型作文」というような名前が出されたりします。
その中の一つをとって、みんなで呼ぶ名前を決めます。「名づけ」をします。
「ある日型」としたり、「ある日のこと」作文、とでも名付けたら、「ある日型の作文にぴったりの歌がある
でしょう。」と言ってみます。「ある日、ある日」と節を付けて歌ってあげれば、子どもたちも歌い出します
。「…もりの なか くまさんに、であった はなさく もりの みち くまさんにであった」。二番も歌います
。「ところが あとから くまさんが ついてくる とことことことこと」。そして三番。ここには会話も入ってき
ます。「おじょうさん おまちなさい、…」。こんな具合にみんなで歌います。これは「もりの くまさん型」
5
作文とも名なづけることができます。
では、「いつも型」の作文の歌は、というと「いつもの駅で、いつもあう、セーラー服の おさげがみ も
う くること もうくるころ 今日も まちぼうけ」と歌います。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが坂
本九の「明日がある」の歌です。でも、これは古いし子どもたちは知りません。いまだったら「手のひらを
太陽に」がいいでしょう。「ぼくらはみんな 生きている」を「生きていた」と過去形になおしたら大変です。
ちょっと脱線?をしながらも「ある日型」と「いつも型」のちがいを意識づけるのです。
(6)どちらのほうがいい作文?
さて、二つの文章、「どっちの方がいい文章だと思いますか。」と問いかけたときには、どんなこたえが
かえってくるのでしょう。上の文章のほうは名前がはいっていたりして具体的に書いているのでやさしい
。下の方が竹馬ののりかたを説明していてなんだか気持ちがはっきりしないように思える。けれども、ど
っちともいえない。子どもの多くは、聞かれたらこまってしまいます。
そこで、二つの作文は、それぞれ書き表したいことがちがっているのだから、どちらがよいと一言では
いえないと先生も思うんだよ、というと、子どもたちは安心します。
一概に、作文の評価はできるものではないし、あらかじめあてをはっきりさせて、書かせたものではな
いからです。
(三)学習の「まとめ」
こうして文章の書き方についての授業をしたあとは、「まとめ」が大切です。板書を写真に撮っておき
、それをもとにして、次のような観点から表にして整理し、プリントして子どもたちに定着させます。《作文
の題・書いた人・書きたいこと・内容・いつのことか・文章の組み立て・文末の表現・文章の型》
そのあとの作文の学習では「ある日型」「いつも型」が、文章を書くときのキーワードになって、有効に
展開されることになります。(注2)
ところで、「ある日型」「いつも型」、一斉指導で授業を展開して子どもたちに書くように指導するときは
、どちらを先に指導するほうがよいのでしょう。
〈注1.2〉については詳しくは、『作文指導のコツ② 中学年』(田中定幸著 子どもの未来社)をご覧ください