子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

豊島作文の会 5月例会の報告(2015年)

豊島作文の会 5月例会の報告(2015年)

第497回豊島作文の会例会
5月23日(土)午後2時~ 豊島区立池袋本町小(元文成小)
提案1 『作文名人への道』(本の泉社)の活用の仕方。
提案者 榎本 豊

大学生になってもまともな文章が書けない

 作文というと、苦手という子どもたちが大変多い。それは、書く時間と題材の選定が保障されていないからである。題材・構成・記述・推敲・交流と言う指導過程があるのに、なかなか思うように保障されていない。教科書に配列されている『書く』単元を読むと、参考作品も乏しく、あらかじめ題材が決められていて、子ども自身が題材を自由に選ベない仕組みになっている。子どもにとって最も大切な『表現意欲』が失ったものを書く程つまらないものはない。
 そこで、この本を読めば、悩みがふきとんで、書いてみたくなる本を出版することにした。高学年の子ども向けに書いたものである。作文の苦手の子どもは、中学生になって読んでみても、参考になるところがたくさんあるように編集した。
 今回は、この本の活用の仕方を、具体的に提示して、皆さんと一緒に考えたい。
 学期はじめで、大変忙しいが、この例会に出て、1年間の『表現指導』の取り組み方が、参考になるように提起したい。 以上第497回例会通信より

「週刊墨教組」抜粋

 国語教科書の「作文教材」が次々に「~文を書こう」という形になってきています。そこでは気の利いたキャッチコピー・人目を引くポップ・粋なプレゼンの練習になってきています。いわば「実用文章」の書き方です。「教科書から『作文』という言葉がなくなり、『報告文』『意見文』『随筆』などの単元があるが、子どもたちの書きたい意欲をそそるような編集になってはいない。書く題材の選定が、あらかじめ決められてしまっている。どの子にも、発達段階に即して、書く手順が示されていない。子どもたちの書いた作品例が乏しい。」
 本来の作文とは、子どもが事実と自身に向き合うための活動です。書くことが自己認識になるような文章を作ることです。
 本書では、つぎのような「作文の書き方のコツ」が紹介されています。
☆「思ったこと」は、思った通りに書く。→思ったことを書く力。
☆「ある日の出来事」は、出来事の始まりから順に書く。→事実を書く力。
☆「長い間にわたった出来事」は、ことがらをえらび経過にそって書く。→経過を書く力。
☆「知らせたいこと・考えたこと」は、説明するように書く。→説明風に書く力。
☆「必要なこと」を説明したり、事実=具体例を入れて書く。→事実を入れて書く力。

学習指導要領国語より

○ 日常生活に必要な基礎的な国語の能力を身に付けることができるよう,次のような改善を図る。
( ア) 「話すこと・聞くこと」,「書くこと」及び「読むこと」の各領域では,日常生活に必要とされる対話,記録,報告,要約,説明,感想などの言語活動を行う能力を確実に身に付けることができるよう,継続的に指導することとし,課題に応じて必要な文章や資料等を取り上げ,基礎的・基本的な知識・技能を活用し,相互に思考を深めたりまとめたりしながら解決
重視する。例えば,低学年では,見たことや知らせたいことを記録し説明や紹介をしたり,体験したことを報告したりすることができる,中学年では,調べたことや観察・実験したことを記録・整理し,説明や報告にまとめて書き,資料を提示しながら発表することができる,高学年では,目的に応じて自分の立場から解説や意見,報告を書き,理由や根拠を示しながら説明することができるとともに,自らの言語活動を振り返ることができる能力などの育成を図る。
 「自ら学び,課題を解決していく能力の育成を重視し,指導事項については学習過程
を明確化した。例えば,「書くこと」では,書くことの課題を決める指導事項や,書いたものを交流する指導事項などを新設し,学習過程全体が分かるように内容を構成している。」

書くことの目標

低学年

 経験したことや想像したことなどについて,順序を整理し簡単な構成を考えて文や文章を書く能力を身に付けさせるとともに,進んで書こうとする態度を身につける。 この時期は、見たり、聞いたりした出来事をていねいに思い出して書くことが大事。「ある日型1」の文章。

中学年

 相手や目的に応じ,調べたことなどが伝わるように,段落相互の関係などに注意して文章を書く能力を身に付けさせるとともに,工夫をしながら書こうとする態度を育てる。 この時期は、何に対しても意欲的・積極的になる時期なので、1回限りの出来事以外に、長い間にわたる出来事にも強い関心を持てるので、一つのテーマを追い求める題材も書ける。「ある日型1」の文章「ある日型2」の文章並びに「いつも型1」の文章にも挑戦。「意見文」の芽生え。

高学年

 目的や意図に応じ,考えたことなどを文章全体の構成の効果を考えて文章に書く能力を身に付けさせるとともに,適切に書こうとする態度を育てる。 「ある日型1」の文章「ある日型2」の文章「いつも型1」の文章にも慣れ、「いつも型2」の文章にも挑戦していく。 随筆」「意見文」「物語」などに十分応用できる。
 作文を主とする指導 については、第1学年から第4学年までは年間105単位時間程度、第5学年及び第6 学年では年間70単位時間とする。 このように指導要領でも、作文を主とする時間数が強調されている。低中学年は、週に2~3時間は、高学年は、週1~2時間を時間割に確保してもおかしくない。

教科書では

四年上光村

★調べたことを整理して書こう「新聞を作ろう」
どんな新聞を作るか考えよう。取材・アンケート・記事の下書き
例として「防災新聞」 はじめから、題材を限定している。
★組み立てを考えて書こう「自分の考えを伝えるには」
「夏休みに遊びに行くならば、山と海のどちらがいいか、自分の考えを発表する。」
話題例・ハイキングに行くなら、春と秋のどちらがいいか。
・学級全員で遊ぶならば、ドッジボールとカルタのどちらがいいか。作品例として、「山がいい」考えの文と「海がいい」考えの文章が載せてある。
 ここでも、題材を固定化しがち。自分の書きたい気持ちと関係ない題材を書くほどつまらないものはない。

五年光村(上下1冊)

★事実と考えを区別して、活動を報告する文章を書こう。 計画したことと実際に活動したことを、事実にもとづいて、読む人にわかるように報告しよう。
例として、クラブ活動、委員会や係りの活動などのことを、「活動報告書」として書かせる。
作品例
2ページにわたって、「活動計画」「活動内容」「活動して考えたこと」「今後の活動について」と書かれている。
ここでも、狭い意味での活動に限定されている。長い間の出来事で、ずっと気になっていることを説明するように書いてみよう。「いつも型1」か「いつも型2」で、十分対応でき、しかも題材が広がる。
★考えを明確にして話しあい、提案する文章を書こう。 参考資料① 消費税を考える
自分の考えを明らかにして、話し合おう。自分たちの考えが伝わるように、提案書を書こう。 身の回りにある問題について考えよう。→何を提案するかを、グループで話し合おう。
→提案書を書こう。 グループで話し合い、課題を見つけさせるのは、かなり高度である。まずは、一人ひとりの書く力を大事にしたい。
作品例 「地域との繋がりを強くしよう  グループ発表(4人の名前)
地域の人と顔見知りになるために、「あいさつ運動」が大事と書いて、提案として、  小学校で行う防災訓練へ、地域の方の参加を呼びかける提案をする。。
ここには、書く題材の選定、価値観の強制する文章が決められている。教師にほめられるような文章を、意識して書くようになるだろう。一つのことをずっと追い求めたことを書かせれば、もっとユニークな題材が出てくるはず。
★理由付けを明確にして説明しよう 参考資料② 「ガムはき捨てはいいめいわくだ」
「グラフや表を用いて書こう」として、「ゴミの排出量の推移」「平日の生活時間」「日本の年齢別人口」「電話の加入数の推移」の4つのグラフや表を並べる。
 作品例 「ゴミの排出量の推移」をもとに、「社会は、くらしやすい方向に向かっている」と題で、書かれた作品。過去10年間の「1人あたりの排出量」の折れ線グラフと「総排出量」の棒グラフの変化を分析した文章。
ここにも、題材の固定化が見られる。
★表現を工夫して物語を書こう「1枚の写真から」
「吊り橋」「木によじ登る二匹の写真」「校庭に作く満開のサクラ」「新幹線を見る親子」 「雪の降ったあとの何かの足跡」「草むらに寝転ぶ猫」と六つの写真
この中から、一つの写真を選び、想像を広げて物語を作る。
書き出しの例として、
「約束の時間が過ぎても、健太は来ません。桜の花びらがひらひらと落ちています。気がつくと、くつの上に積もっていました。広一は、そわそわしながら辺りを見回しました。健太は、広一が一年生の時からの親友です。」
並べられている写真は、自分の生活とは、全く関係ないものである。それを、想像させ ながら書かせることの意味があるのだろうか。

六年光村(上下1冊) 単元名のみ列挙

★町の良さを伝えるパンフレットを作ろう
★意見を聞き合って考えを深め、意見文を書こう
「ぼくは、今の平和な暮らしが、ずっと続いてほしいと思います。」と言う吹き出しから 話し合う文章。
「未来がよりよくあるために」作品例として、「えがをは、よりよい未来への第一歩」
資料として、「平和のとりでを築く」
★「この絵、私はこう見る」
 絵に描かれている動植物の絵を元に、どんなことを感じたかを書かせる。
★随筆を書こう「忘れられない言葉」参考資料④ 「卒業文集に取り組む」
自分が経験したことや、見たり聞いたりしたことの中から、忘れられないような印象深いことを取り上げ、それについて自分の思いや考えを書くことがあります。
ここに書かれた説明は、長い間にわたる出来事の中で、心に強く残ったこををまとめて説明する「いつも型」の文章のことである。
「ふわふわの雪」「明日の私は新しい」とそれぞれ、作家の書いた作品を載せる。
こどもたちに随筆を書かせるのなら、子どもの作品を載せるべきではないだろうか。
世の中の出来事と直結する題材が出てくる。「消費税3%」「ガムの履き捨ては、いい迷惑だ」「戦 争の体験を聞く」現在なら、「福島の原発問題」「沖縄の基地問題」等、たくさんある。

「作文名人への道」その活用の仕方

Ⅰ基本となる書き方を身につけよう。
生活の中で感じたり、考えたりしたことを書く。

つぶやきを書く

 日常の何気ない生活の中で、心の中から思わず出てきた言葉→驚き・叫び・怒りなどを書き込む。→漢字・ひらがな・カタカナ何でも自由に→作文のネタに 短歌や俳句の題材へ

心が動いたときに事実を中心に書く→日記を書こう

「浅間山の火山灰」作品の見方。この文章では、「聞く」をきっかけに「見る」が中心。
 宗一郎にとって「見る」という行為は自分の頭で「考える」ことでもある。部品を見ては〈この部品はなぜこんな形になるのか〉〈ここを工夫すればもっと小さくなる〉……。見ては考え、考えては見る、その繰り返しである。「やらまいか」「朝日新聞」夕刊
 この文章は、「聞く」と「見る」を中心に話が展開し、途中で「話す」が何度か出てくる。最初の母親の会話に自分の心が動いたのである。つまり、心や体が、生き生きと働いていたから、その会話に反応して、話が展開していくのである。「生活のしぶり」がいい。ものの見方考え方がしっかり身についている。

「ある日型1」の文章 P30

 1回限りの出来事を順に「でした。」「ました。」(丁寧体)「した。」(普通体)と過ぎ去った書き方で書く。

「ある日型2」の文章 P39

 「何日も続いたこと」で心が動いたことを考え続けたことを出来事の順に書く
  P45~46に、その題材が、具体的に書かれている。長い間にわたった出来事を、題材にします。 作品例「ベランダのねごこち」
「・・しました。」「・・したのでした。」「・・したのだった。」と過去形表現で書いていく。

「いつも型1」の文章 P54

「いつも思っていること・考えていること」を「説明するように書く」
作品例「ぼくの友だち林勇治君」
「いつも思っていること・考えていること」を「説明するように書く」
 題材が決まったら、どんな書き出しから書き、中心にはどのような内容を組み込んでいくのか、締めくくりはどう書いていくのかと、構成表を作ってみる。

「いつも型2」の文章 P68

 まとめて説明する中に「具体例」や「事実」、あるいは「引用」を、意識的に入れて書く文章。作品例「目の悪いぼく」
 あることがらを引用したり、説得力のある文章を書こうとするとき、この「いつも型2」の書き方を身につけていれば、どの文章も自由に書けるようになります。教科書の単元にある、「随筆」「意見文」「コラム」「読書感想文」を書くときに役立ちます。
 お勧めの題材として、いくつかの題材例があるので、これを参考にして、題材の幅を広げたい。
Ⅱいろいろな文章を書いてみよう。
「随筆」「意見文」「物語」などを書く。
2 意見文を書く  新聞に投書してみよう。
参考資料③「新聞の記事を読み、自分の意見にまとめる」
⑤「夏休みに新聞の切り抜き帳を課題にする」

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