子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

5号

はじける芽5号

広島・長崎の原爆を教える

    げんばく
       豊島区立池袋第三小
            5年 女子
げんぱくのけむりは、
人聞をつつんでどこへ
いったのかなあ。
きっとげんぱくで死んだ人の所へいったんだ。
げんぼくは、何も知らないで広島にまっきかきまに落ちた。
そのあとしんだ人の所に行ってきっと、
「ほんとうにわるかった。」
と言っているんだ。
でも、広島の人のくやしさは、今でも消えない。
きっと苦しくて悲しんだったんだろうなあ。
一人残された子どもは、きっと戦争をとめるだろう。
その時の気持ちがわかるなあ。
きっと、広島のおそろしい記録に残るだろうなあ。
1970年10月作
 今から17年前、当時5年生を担任していた。たまたま『原爆の子』(岩波書店)の、広島の少年少女の訴えた作文に衝撃を覚え、何とかそれを子どもに伝えたかった。当時、ベトナム戦争は拡大を続け、となりのカンボジアまで広がっていた。そういう情勢の中で、平和の意味について知るには、戦争のむごさを伝えることだと考えた。
 被爆後6年たって綴られた文章は、どの文も悲しく残酷であった。5・6編の作品を読んで聞かせるだけで、子ども達には、原爆のおそろしさは伝えられた。その後、話し合いを行い、それを全員、詩で表現した中の一編が石田さんの作品である。作文や詩の授業など系統だってやっていなかったが、子ども達は、それなりに感動を切りとり、表現してくれた。
 当時、一枚文詩集をはじめていた。さっそく全員の詩をガリ版で書き、みんなで読みあった。まだコピーなどという便利な機械は、学校にはなかった。手刷りの印刷機が残っていて、輪転機が電動式に変わる頃であった。鉄筆でろう原紙をカリカリやっていた。私の手もとに残っている武骨で、ただ作品だけをならべているにすぎない、古い文集の中にのっている作品である。

戦争中の生活を聞き書きする

…その夜は、浅草の火が、隅田川の水の上をスルスルとはって、向島まで来ました。うちから、五分ぐらいの所にある言問橋の上は、浅草と向島両方から、荷車を引いてにげて来た人がぶつかって、動けなくなりました。
 その荷車に、火がついてもえだし、まるで橋は、木でできた橋かと思ってしまいました。よく朝、おじいさんは、やけ野原になってしまった所を、
(もう死んでしまったのか。)
と思いながら、げん森橋の方から、なり平の方に向かって、おばあさんと、みよ子おばさんをきがし回りました。
 東武電車のえきを自てん車にのって、順番にさがしていたら、押上の京成の横のはらっぱに、二人でもうふをかぶっていました。おばあさんと、みよ子おばさんは、けむりで目がよく見えなくなっていたので、おじいさんが、そばに行くまで気がつきませんでしたeおじいさんが、おばあさんのかたに手をあてて、
「生きていたのか。。」
と言ったら、おばあさんは、おじいさんに、
「さいしょ、げん森橋ににげたけど、火が来たので、なり平から押上の方に、だんだんと来てしまったよ。何ももってにげなかったけどもうふをかぶってにげて行ったので、たすかったよ。」
と言いました。
 今年、小梅小の六年生になっている山崎綾子さんが、二年生の時に、当時77歳になっていたおじいちゃんから、真心こめて語ってくれた話を綴った一部である。四百字に12枚ほど、何度も書き直して、1984年3月に完成してくれた。
 今年も、8月6日、9日、15日が、敗戦後42回目として来る.私達は、12月8日の太平洋戦争開始も忘れたくない。6月23日、沖縄決戦。3月10日、東京大空襲の記念日も、子どもに伝えていきたい。パネルや物語や、支部に保管されている、8ミリや16ミリの戦争教材は、そのつど、子どもと一緒に利用し考えたい。もちろん五月三日も、戦後の出発の記念日である。
1987年7月17日

平和教育の原点

 7年間の豊島区の学校から、隅田川を渡って初めて墨田区に転勤した。地下鉄銀座線の浅草から下り、言問橋を渡り、すぐ左側が小梅小学校である。まだ言問橋は建て替え前だったので、黒いしみのようなものが結構残っていた。それが大空襲の時に焼けた人間の死体の油のあとだと言うことは、ずいぶんたってから教えられた。まだ担任している保護者の中に大空襲の体験者などがいることを知り、戦争体験の聞き書きが始まった。おじいちゃんの戦争体験を聞き書きしてくれたこの子は、現在32歳くらいになっているはずである。今でも、年賀状の交換は続いている。
2011.11.6

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