子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

19号

はじける芽19号

こだわり続ける子どもに

旧柳島小跡地について 5年生男子 [#uffb364e]

 僕がなぜ旧柳島小跡地のことを書きたくなったかというと、それは僕の家のまわりを見ても、ビルや家だらけで子どもの遊ぶ場所が少ないということからでした。旧柳島小跡地みたく、あんな広い遊び場はあんまりないと思いました。今ある柳島小学校は、もと都の土地で自転車公園となっていました。旧柳島小跡地に柳島小学校が建ってい
ました。なぜかわからないけれど、旧柳島小跡地の所と柳島小学校の今の場所がとっかえっこになり、今りっぱに新都営住宅の前に建てられているのです。
 今から7年前の1982年のことです。三年の頃、社会科の勉強で担任の太田原先生と友だちと、パスで墨田区役所に行って旧柳島小跡地はどうなるのかということで、どこかに遊び場を作っているのかなど、色々聞きに行きました。説明してくれたのは、男性の人でした。区役所の人は、ぶあつい本を持ってきて調べ始めました。〈略〉
「業平橋から平川橋の約330メートル、つり池やしばふをいかした場所。二つ目は、かっぱ橋ゾーンです。平川橋から紅橋の約460メートル、滝やきれいな川や水遊び場を作る。3つ目は、花紅葉ゾーンで紅葉橋から清平橋の約360メートル、小川や池がある和風庭園。四つ目は、パレットプラザゾーン、清平橋から総武線の鉄道のある
所から約330メートル、ふん水や色々な店をたてる予定で君たちが写生ができるようにする。最後の五つ目は、プールテラスゾーソ、総武線の鉄橋からたて川まで400メートルある。色々な広場やボート遊びのできる池を作る予定。」
と話しくれました。〈略〉
 こんどは、柳島小跡地のことです。その人は、ぶあつい本を持ってきて説明してくれました。
「柳島小跡地は老人しせつを作ります。」
と言いました。その後、跡地は以前として空地となっていて遊べません。
 5年生になり個人日記にこのことを書いてみました。赤ベンで榎本先生から作文にしてみたらと書かれ、さっそくこの間題を調べてみました。僕は、旧柳島小跡地のことを父や母はどう思っているのか聞いてみることにしました。母は、
「子どもの遊び場としては、障害物がないからいいじゃない。」
と言っていました。〈略〉
 次は、僕の家のまわりには、遊び場があるか調べました。一組の竹中君の家の近くにある公園で、あぶら公圏。家から前のちょっと横の旧柳島小跡地。僕がよく行くせんとうのとなりの公園。この公園とあぶら公園では、同じ位の広さで旧柳島小跡地よりぜんぜん小さい公園です。僕の家のまわりには、3つしか遊び場はありません。
 僕のクラスのみんなに、アンケートをとりました。アンケートをとったのは、7月の作文の資料として使いたかったからで、みんなに協力してもらったのです。
遊び場についてのアンケート
①旧柳島小跡地が使えたらどんなことをしたいですか。
②ふつう何時から何時まで遊びますか。
③あなたはならいごとをしていますか。
④友達とどういう遊びをしていますか。
⑤学校が休みの時、どこで遊びますか。
⑥あんまり友だちと遊ばない人は、にをして家で遊んでいますか。
⑦あなたは外に遊びに行く時、自転車で行きますか。〈略〉
 この結果から、5の2のクラスの半分以上がファミコンを持っているが、外で遊んでいる人が多いということ。旧柳島小跡地が使えたら広いから、野球やサッカーをしたいということ。みんなならいごとをほとんどならっているということ。サッカーや野球などは広い場所でないとできないので、旧柳島小跡地が使えて開放してくれたら、どんなにかいいだろうかと思いました。ちょうど今、都議会議員選挙中でした。議員に立こうほしている人に、聞いてみようと考えました。
 もしも選挙にうかったらの話で、僕が旧柳島小跡地を開放してくれるかということを、I氏に聞いてしまったのでした。聞いた場所は横川三丁目の上村そば屋の前で話しを聞きました。僕の体は緊張してしまい、胸がドッキンドッキンとなり、心の中でアタックと思いました。
「もしも議員に選ばれたら、僕たちの願いを話し合ってくれますか。」
そしたらI氏は
「それは、町を豊かにしていくのは、わたしたちの仕事ですから。」
と答えてくれました。
「すみませんが、もう一つだけ質問してもいいですか。」
と言うと、I氏は、
「いいですよ。」
と答えました。
「あそこにある元柳島小学校だった所、開放してくれるのですか。」
と聞くと、I氏は、
「それはわかりませんが、君たちの願いなんですから、どうにかしたいですね。」
と言いました。聞いた日は、6月29日(木)の話でした。〈略〉 
 選挙投票の日になりました。僕は父と母が投票するので、業平小学校へ行きました。人はけつこういました。まず父は紙を持って、字をずらずら書きました。母も紙に字をすばやく書いていました。当選発表は月曜日の新聞にのるというので、
(I氏がうかるかなあ。)
とそわそわしていました。
 次の日のタかんの日本経済新聞を見たら、墨田区、石橋正夫、桜井たけし、石井よしのぶに当選のマークがついていました。〈略〉
 父にこんな話を開いたのです。
「昔の議員は、お金もちなんかいなくてびんぼう人だった。でも、びんぼうでも、町を豊かにするというので、すごく熱心で、いい議員さんばっかしだったんだよ。」
と言っていました。
 だから僕は父の話を信じて、お金のことをあんまり気にしていない議員の方がいいと思いました。今はこんな働きをする議員なんか少ないのではないのか。これで僕が調べたのは終りです。僕は3年生の頃から、この間題をずっと考えてきました。今だに空地は、老人しせつにならず、立入禁止になっています。いつになったら跡地が僕達の遊び場になるのでしょうか。これからもずっと考えていきたいです。(1990年2月作)

3年生の課題を持ち続ける子

 二年前に退職された太田原和子さんのこだわりを、子どもなりに必死に受けとめて考え続けている文である。書いた人は大塚正博君である。彼はその後、田中淳子先生に担任され追求する学習の大切さを身につけて、社会科大好き人聞になっていく。そのもとは、住み良い墨田区からの出発であった。その学習の延長として当時の担任の太田
原先生と一緒に区役所まで行く。これからの墨田区の空地の利用などを聞きに行く。同時に柳島小跡地が利用出来ないまま、老人施設建設の予定を聞いてくる。その跡地はいぜんとして五年生になっても立入禁止で、子ども達の遊び場としても利用できない。そのことを五年生になって日記に書いてきて、さらに追求していくことになる。自分
の両親にどう思っているかを聞いたり、クラスの全員にアンケートをとったりしていく。最終的には、跡地が遊び場として利用できないかと考えていく。
 最後に都議会議員の立候補者に、僕たちの顕いを聞いてほしいとインタビューまでしてしまう。立候補者の返答は型通りのあたり前の返事きり返ってこないが、かかわりを持った人の当落にも気をもむようになる。かかわった候補者が当選はするが、跡地のことは以前と同じ状態である。最後に、いつになったら跡地がぼくたちの遊び場にな
るのであろうかと結び、これからもずっと考えていきたいと追求する姿勢でもって終わっている。

しつこさを大切に

 この作品はプリントにして2時間みんなで読み合い、何が書きたかったのかの主題を考え合った。その主題にせまるために、しつこくこだわり続けることの大事さを文にそくしながら話し合った。やがて大塚君は、自分の両親にもこのできあがった文章を家でも読み合う。ご両親は彼の願いの実現のために、知り合いの区議会議員にもその文を
みせ今後のことを聞いてもらう。そのことについて、お母さんからていねいなその件についてのお手紙をいただく。結果的には現状の状態のままで、すぐには利用出来ないことになったようだ。
 しかし、この文章を綴らせる中で、世の中の身近なことを自分の生活とつなげて考え統けたことに、この子ならびにクラス集団は大きな事を学べた。この件はまだ追い求め続ける課題になっている。
 この子ならびにクラス集団が6年生になった時、政治単元学習でこの身近な問題がまたつながってくる。戦後社会科の精神は、人々の幸せの追求の実現にあった。その幸せの追求の障害になっているものは何かを学びあい、それを取り除くことの手立てを考え合っていく過程が大切にされた。
 僕の尊敬してやまない込谷雄先生(前業平小)は、社会科教育の大切な所は、日本国憲法の精神をどう子どもに植え付けさせるかにあるか、幸せの追求こそ最も大切にされるべきであると、しきりに話され、今でもそのことを力説しておられる。
1990.2.22

ものごとにこだわり続ける子ども

 今の子供達に、このように1つのことを追い求める子どもがどのくらいいるのだろうか。自分の身近なところから出発しているところも良い。低学年の時に培った、こだわり続けることを、高学年になっても考えている。私達は、すぐに結果を求める傾向がある。民主主義は、時間がかかる。みんなで考え合う過程が大切なのだ。今の教育現場には、教える教師の側も、縦の命令系統が出来ていて、職員会議もあまりせず、上からお達しが来て、それをみんなは、従う組織になっている。奴隷の思想が、教える側にあったら、こんな子供達は、育たないだろう。
2012.1.19(木)

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