子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

22号

はじける芽22号

 現行の学習指導要領の国語では、作文の時間を週2時間前後はとるような配分になっている。では、実際にそのような作文の時間を確保しているのだろうか。 改訂の学習指導要領では、その割合はもっと増え、1年から4年までは年間105時間の週3時間になる。指導要領に拘束される必要はないと言われればそれまでだが、作文の配当はかなり多くしめられていることは事実なのだ。
 そこで、日記指導であれ、作文の授業であれ、子供達が書いた文章をどう見ていったらよいのか。どういう所に目をつけていったらよいのか。
 作品をこんなふうに見ていくのだとわかると、それがとりもなおさず、どう指導していくのかをあきらかにすることになるのでしばらく作品分析していく。
  

ぼくのお父さんは皮工場  柳島小五年

 ぼくのお父さんは、皮をうすくする仕事をしています。ぼくのお父さんの仕事の場所は、荒川の土手のそばにあります。お父さんの仕事で、働く人の人数は2人です。それは、お父さんとお父さんの弟さんです。おじいちゃんも、去年まで働いていました。皮をうすくするだけじゃなく、なんかのこなをかけています。
 ぼくのお父さんは、朝6時に家を出ていって、仕事場に行きます。
仕事を始めるのは、7時ぐらいです。お昼は12時から12時半まで、それからまた始めます。
「終りは9時ごろにだいたい終り。」
と言っていました。ぼくはお父さんに、
「仕事する時闘が、長いんじゃないの。」
と言うと、お父さんが、
「お父さんの仕事は、いっぱいしなくちゃもうからないから。」
と言っていました。お父さんの仕事は、ぼけっとしていると、指が切れるからあぶないです。お父さんは帰って来ると、
「さむいよう。」
と言っています。うちのお父さんは、オートバイで通っています。うちのお父さんは、夜十時ごろに帰ってから、夜ごはんを食べます。お父さんは、手があれてるからクリームを手につけています。お父さんは、休みは、日よう日とさいじつです。夏休みはおぼんで、冬休みは12月29日から、1月3日まで休みます。ぼくはお父さんに、
「冬休みと夏休みは、少ないんじゃない。」
と言うと、お父さんは、
「うん。」
と言っていました。
 お父さんは、冬休み近くになると、仕事場の大そうじをするので、12時ごろに帰って来る時があります。ぼくが、
「皮をけずったかすは、どうなるの。」
と言うと、お父さんが、
「ゴミ屋さんに持っていってもらう。」
と言っていました。ぼくがお父さんに、
「おもしろいことってなあに。」
と聞くと、お父さんが、
「1日の仕事が終わった時。」
と言っていました。また、ぼくがお父さんに、
「つまらないことってなあに。」
と聞くと、お父さんが、
「朝早いことと、仕事をはじめる時。」
と言っていました。お父さんは、皮をうすくしたのをトラックでちがう所に運んでいきます。
「お父さんのうすくしている皮は、何の皮なの。」
と聞くと、お父さんが、
「ぶたの皮なんだ。」
と言っていました。またお父さんに、
「それで何が出来るの。」
と聞くと、お父さんが、
「かわぐつと皮のコートとか。」
と言っていました。お父さんが、こう言っていました。
「夏は、地ごくのように暑くて、冬は寒い。」
 夏になると、お父さんの仕事場に、かがいるのでかとり線香をやっていました。(後半略) 
 1990年3月作

生活態度・姿勢(認識の仕方・操作)

○常へいぜいの生活のしぶり

●その時々の体や心の動かし方・行動

○父親の仕事に常に関心があるから、聞いている。
●疑問に思ったことをすぐに聞いている姿勢が良い。
●お父さんが何気なしにしゃべっている所に、重みのある現実がある。
○お父さんの帰りの声をいつもよく聞き慣れている。○ここの所も、お父さんの帰り時刻、しぐさをよく観察している。
●日本の労働の現実。労働時間、労働日数を考えさせたい。
●自分の疑問をまた聞いている。
●ここのお父さんの返事は、短いが重みがある。それを聞きのがさず覚えている。
●8時間労働とは、ほど遠い。
○働く時間内容がきびしいので、よいこともあるのかと言う意味で聞いていてえらい。
●仕事から解放される喜び。働くことが喜びになっていない。
●ここできびしい現実を正直に言う父親はすばらしい。
●ここで具体的にたずねているのがよい。
○1年中厳しい労働に、この子どもが気がついていく。

表現の方法・技術

○文章の組み立て方。

●こまかい書きつづり方。

○なぜこのような仕事に関心を持つようになったのかが、書き出しにあった方がよい。
●仕事の中身・場所・人数などがきちんと書けている。
●おじいちゃんは、なぜやめたのかな。
●朝9時に家を出て、7時くらいから始める。
●夜の9時頃まで働くとは、大変なことだ。
●働く時間を会話の形にしてきちんと書いている。
●指が切れるとは、かなり危険な仕事とわかる。
●夜10時から夜ご飯とは、大変なことだ。
●1年間のお休みが少ないがよく働くお父さんだ。
●疑問を会話の形で書いている。
●たまには、ずいぶんおそくなると言うことがわかる。
○ここで仕事の内容とまた書いているが、ここの部分で書き入れてよいか。
●毎日の仕事がきついと言うことがわかる。
●ここでも仕事がきついことが会話に出ている。
●車で品物を運ぶこともやっている。
●ぶたの皮から日常の私達の身近な品物に作られる。
○はじめ、なか、おわりの構想指導は必要だが、一文一文には思い現実がわかる。
●1年中きびしいもとで働いていることがわかる。
●かが出る中での仕事はきびしい。
1990年5月17日

3段法で、作品を分析する

 生活態度・姿勢(生活のしぶり)は、上の段に、表現の方法・技術(書きぶり)は、下の段にして、3段にして作品を分析する。本来なら、そのようにしてここに紹介した方が、作品の一文一文に即して見やすい。しかし、ここでは、それが出来ないので、このようにしてまとめてみた。このようにして、子供達の文章を分析していくと、作品の内容がしっかり自分のものに出来る。いつもそうするのでなく、この作品は、子どもと一緒に考え合ってみようという授業をするときに、事前にしておくと、何を大事に強調するかもよくわかる。子供達に、この方法で、分析させると、作品の見方が深まる。同時に、自分の文章を書いていくときに、しっかりしたひとまとまりの文章が書けるようになる。
2012.1.25

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