子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

25号

はじける芽25号

海部さんへの手紙 柳島小 六年男子

 二、三日前のことでした。新聞の折り込みのちらしの中に、『子どもたちをふたたび戦場に送るな』と大きく書いであった。読んでみると、「イラクに自衛陵を派兵するのは反対」というようなことが、表にもうらにも書いであった。
(今、派兵をしてぼくたちが大人になって戦場へつれていかれるのはいやだから、ぼくも反対だな。)
と思った。その紙のはじの方を見ると、内閣総理大臣に手紙をだしましょう』と、首相官邸の住所も書いてあった。
(あ、ぼくも手紙だそーっと!)
と思った。
 次の日、帰りの話し合いが終り、放課後、菊地君と渡辺君と、校庭でマラソンをした。その時、
「ぼく海部さんに派兵しないでって手紙書くよ。」
とぼくが言うと、
「書いてもむだだよ。」
と菊地君が言った。
「それに今は、派兵っていわないで派けんて言うんだって、派兵っていうのは戦争をしかけることなんだけど、派けんていうのは、戦場に行ってその時の状きょうなどを見るだけなんだって。」
と菊地君が言った。
(どっちも戦地に行くにはかわりないじゃん。)
と思った。
「海部首相ってさ、最初ぜったいに派兵しないって言ってたじゃん。だけどね、千代田区永田町で暴力団におどされたんだって。」
と菊地君が言った。
「なんて言っておどされたの?」
「知らん、派兵しろって言われたんじゃん。」
「よくそんなこと知ってんね。」
「電車の週刊紙の広告の見出しに書いであった。」
(だけどなんで暴力団に派兵しろなんておどされなきゃ行けないんだろう。)
と思った。
「むだでも書いてみるよ。」
とぼくが言った。
「ただいま。」
 家に帰ってきても、だれもいない。両親がつとめているからだ。時計を見ると、3時5分だった。さっそく、
(海部さんに手紙を書こう。)
と思った、はがきのある場所を知らない。
(お母さんが帰ってきたら、はがきを出してもらおう。)
と思った。
5時5分頃、
「ただいまあ。」
と母が帰ってきた。さっそく母に、
「ねえ、お母さん、はがきちょうだい。」
と言った。
「いいわよ。何枚ほしいの?」
「一枚でいいよ。」
「だれにだすの?」
きのうのビラのちらしを母に手渡した。ビラを母が読んでいる時、
「このことで海部さんに手紙出すの。」
とぼくが言った。
 まず海部さんの住所と名前を表に書いた。そして、うらにはこう書いた。
「海部さんにお願いがあります。イラクに自衛隊を派けんしないで下さい。いくら戦わないで行くだけといっても、イラクから見て、自衛隊は敵です。そしたらたいほうとかもバンバンうってきます。それで、もし、あなたの子どもが自衛隊でたいほうにうたれて死んだら、悲しい思いをするでしょう。だから、自衛隊をイラク派けんしないでください。」
それと自分の住所を書いた。
(これ読んで、やめてくれたらいいな。)
と思った。

生活態度・姿勢(認識の仕方・操作)

○常へいぜいの生活のしぶり

●その時々の体や心の動かし方・行動

○配られた新聞の折り込みの中のチラシに積極的に関わる。
●派兵の意味をきちんと理解して、自分の意志が決められる。
●総理大臣の手紙という欄にすぐ気がつき、手紙を出そうと考える所がよい。
○毎日「青森まで歩こう」のマラソンに忘れずに努力している。
●手紙を出すことを、友達に話して、一緒に考えようとしている。
●派兵と派けんの政府側の答弁の内容をしっかり知っている。
●戦地に行くのは変わりないと、自分の心のなあで考えた。
●暴力団が誰なのか。そういう記事を知っている。
●おどされた内容を聞いている。
●週刊誌の広告の見出しからと言うことがわかる。
●総理大臣が暴力団におどされるなんておかしいと考えた。
●自分の意志を変えず、友達に伝えている。その時の菊池君の反応は?
●誰もいなくても、声を出しているところはえらい。
●手紙のことを忘れないでいる。
●5時15分頃とは、どこでわかったの。
●さっそくはがきのことをお母さんに言っている。
●お母さんもすぐに反応している。
●手紙のきっかけになったものをすぐに母親に見せている。
●「海部さんに手紙を出すの」といったあと、お母さんの反応は?
●手紙の内容を自分で考えて、すぐにはがきを書いているのがえらい。

表現の方法・技術

○文章の組み立て方。

●細かい書きつづり方。

○書きたい内容のきっかけから書いている。
●いつの日、誰が、どこで、何をしたかが書けている。
●ビラの見出し、表と裏を見たことを書いている。
●その時、心の中で思ったことを書いている。
●首相官邸の住所のことまで書いている。
●手紙を出す決意がわかるように書けている。
●手紙を書くことを、友達に話し、相手の会話も書いている。
●自分の考えたことをしっかり書いている。●友達の菊池君と2人で話し合った内容をきちんと書いている。
●おかしな疑問をその通りに書いている。
●自分の意志をはきりしゃべったことを書いている。
●家に帰った頃には、誰もいないことがわかるように説明して書いてある。
●自分1人ではがきを書こうと思ったが見つからず、あきらめた時の、心の中のことが書けている。
●母親の帰ってきた頃の時刻が書けている。
●母親の帰ってきた頃の会話のやりとりが書けている。
●手紙を出すまでの母親とのやりとりがよく書けている。
○海部さんに手紙を書いた内容が、しっかり書けている。
○書き終わった後の自分の気持ちを素直に書いている。
 この文を班日記に書いた文の後ろに、母親も戦争につながる自衛隊派兵反対の意味を、親子で話し合った文を、子どもと同じ量くらい書いていた。
1990年11月15日作

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