子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

5月16日(土) 総長も黒川検事長も「辞職せよ」

5月16日(土) 総長も黒川検事長も「辞職せよ」

2020年5月12日、堀田力さん(元法務省官房長)1934年生まれ。東京地検特捜部検事としてロッキード事件を捜査した方が、朝日の朝刊で、心に残る記事を載せている。ここに全文を載せて、記録に残したい。この記事は、大変な反響があったと聞いている。

与党の政治家の不正を追及させないため

 検察幹部を政府の裁量で定年延長させる真の狙いは、与党の政治家の不正を追及させないため以外に考えられません。東京高検の黒川弘務検事長の定年を延長した理由に、政府は「重大かつ複雑困難な事件の捜査・公判の対応」を挙げました。黒川君は優秀な検察官ですが、黒川君でなければ適切な指揮ができないような事件はありえません。
今回の法改正を許せば、検察の独立に対する国民の信頼は大きく揺らぎます。「政治におもねる組織だ」と見られると、捜査につながる情報が入らなくなったり、取り調べで被疑者との信頼関係を築きにくくなって真実の供述が得られなくなったり、現場に大きな影響が出るでしょう。
 検察はこれまでも、政治からの独立をめぐって葛藤を続けてきました。検察庁は行政組織の一つとして内閣の下にあり、裁判所のように制度的に独立していない。一方で、政治家がからむ疑惑を解明する重い責務を国民に対して担っています。与党と対立せざるを得ない関係なのです。
 その葛藤が最も顕著に現れているのが、法相による「指揮権」の仕組みです。検察庁法14条で、法相が個別の事件について指揮できるのは検事総長のみと規定しています。法相が不当な指揮権を発動したら、総長はやめるよう説得する義務があります。応じなければ、総長は公表して世論に訴えるか、辞職して指揮が及ばないようにすべきなのです。
 1954年に造船疑獄事件の捜査で、当時の法相が指揮権を発動し、与党幹事長の逮捕を阻止しました。国民の怒りを買って法相は辞任に追い込まれ、政治側も傷を負いました。以来、一度も発動されていません。私も法務省官房長時代、新たに就任した法相には造船疑獄事件も引き合いに「指揮権は形式的には発動できるが、国民のためにならない」と説明してきました。
 私の経験から言えば、政治家がその権力を背景に捜査に圧力をかけてくることはよくあります。それでもひるまず真相を解明しようとする気概のある上司が多かった。ひるみそうな上司には、ぎりぎりまで報告しない現場の工夫もありました。
 組織のトップたる総長や検事長には政治の不当な圧力に対抗できる胆力が求められ、その人事が政治家の判断にかかるようなことはあってはならないのです。だからこそ、今回の幹部の定年延長の規定は削除すべきです。これまでも法務・検察内では候補を先まで緩やかに決め、制度上は任命権を持つ内閣もこれを尊重してきたのですから。
 政治による不当な定年延長を受け入れた黒川君の責任は大きいし、それを認めた稲田伸夫・現総長も検察への国民の信頼を損なった責任がある。2人とは親しいですが、それでも言わざるを得ない。自ら辞職すべきです。そして、仮に改正法が成立しても「政府から定年延長を持ちかけられても今後、検察はそれを受けない」くらいの宣言をする。それによって検察の原点である公正中立を守り、国民の信頼を回復するのに貢献してほしいと願います。(聞き手・酒本友紀子)

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