子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

会話について考える その2

会話について考える その2

★会話のはたらきを考える。中学年

おつかいのこと   墨田区立立花小学校  3年 土井 ゆかり

 きのう、わたしは、学どうからかえってきたら、母がいたので、
「ただいま。」 ①
と言いました。そうしたら、母が、
「おかえり。」 ②
と言いかえしてくれました。そして、私が、ランドセルをおいて、テレビをつけました。そして、テレビをつけたら、母が、
「ゆかりちゃんに、たのみたいことがあるんだけど。」 ③
と言いました。だから私が、
「なに。」 ④
とききました。そしたら、母が、
「セーフーに行って、アサツキというネギを買ってきて。」 ⑤
と言ったので、私は、
「いいよ。」 ⑥
と言いました。母が、
「もしなかったら、ほそいねぎをかってきて。」 ⑦
そして、私は、
「五百円でたりるよね。」 ⑧
と言って、五百円を私にわたしました。でも、その時、私は、おなかがすいたので、母に、
「おなかすいた。」 ⑨
と言ったら、
「じゃあパンたべて行きな。」 ⑩
と言ったので、パンの中にチョコチップが入っているパンをたべながら、いえを出ていって、十分くらいたったらつきました。きのうは、じてん車ではなかったので、十分くらいになってしまいました。そして、セーフーについたらまず、お店の人に、
「あさつきっていうねぎありますか。」 ⑪
ときいたら、
「ゴメンね、あさつきは、セーフーにはおいてないんだよ。」 ⑪
と言いました。私は、
「あー、」 ⑫
と言いました。
「じゃあ、細いネギありましたか。」 ⑬
ときいたら、
「あるよ。」 ⑭
と言ったので、そのお店の人について行って、お店の人が、
「これだよ。」 ⑮
と言ったので、私は、
「ありがとうございました。」 ⑯
と言ったら、お店の人が、
「はい。」 ⑰
と言って、行ってしまいました。
そして、レジにならんで、母からもらった五百円をわたして、ネギは百五円だったので、三百九十五円おつりがかえってきたので、そのお金をポケットに入れてかえりました。家について、母が、
「ありがとう。」 ⑱
と言いながら、私に百円をくれました。きのうはさいこうの日でした。
2002年5月作

作品分析

 どんな出来事でも、「きっかけ」がある。文章は、きっかけから書くように指導する。場面の切り取りも、きちんと出来る。買い物をするときには、お金がかかる。そのお金のことも、丁寧に思い出して、具体的に書く。自分や相手の会話を意識して書く。結論をすぐに書かずに、途中経過を丁寧に思い出して、書いていくことが、「いきいきとした文章」になると何度も学習してできあがった作品の1つである。
 ①の「ただいま。」と、家に帰ったら、必ず声を出している。この会話によって、家に帰ったところから書き出していることがわかる。その会話は、母親の姿を確認してからしていることもわかる。「学どうからかえってきたら、」と、どこから帰ってきたこともわかる。②の「おかえり。」で、すぐ母親が言葉を返してくれたことがわかる。しかも、「言いかえしてくれました。」という表現の仕方が、なかなか良い。「言いました。」でなく「言いかえしてくれた。」という書き方に、作者のうれしい気持ちまで伝わってくる。③の「ゆかりちゃんに、たのみたいことがあるんだけど。」と言う会話は、母親が子どもにお願いをするのに、ていねいに頼んでいることがわかる。たとえ親でも、子どもに頼み事をするときは、このようにていねいな言い方で頼んでいる母親の姿勢がわかる。④ の「なに。」と、すぐに返事をしているのもいい。親子のつながりの良さも読み取れる。⑤の「セーフーに行って、アサツキというネギを買ってきて。」と、具体的に店の名前とアサツキを買うように頼まれている。⑥の「いいよ。」と言う返事で、作者の素直な気持ちも伝わる。同時に物事に対して、意欲的積極的姿勢も伝わる。短い会話の返事であるが、これも、値打ちのある会話になっている。⑦の「もしなかったら、ほそいねぎをかってきて。」と、次の要求も出している。その後に「五百円でたりるよね。」⑧と言って、母親が五百円を渡している。きちんと金額を聞いたとおりに書いているのも良い。「五百円を私にわたしました。」さらにお金が手渡されたことも念を押している。「おなかすいた。」⑨と「じゃあパンたべて行きな。」⑩と言うやりとりで、行く前に軽く食べていくことがわかる。10分くらいとかかった時間がかけている。「あさつきっていうねぎありますか。」⑪とお店の人に、すぐ聞いている。「ゴメンね、あさつきは、セーフーにはおいてないんだよ。」 ⑪と言う店の人の申し訳ない気持ちが伝わってくる。たくさんの品物が並んでいるのに、「アサツキ」という品物はないと言うことをすぐに返答していることから、この店員さんが、よく店のことがわかっている人だと言うこともわかる。「あー、」⑫と言う短い返事の中に、残念な気持ちが伝わってくる。「じゃあ、細いネギありましたか。」⑬と、母親に追加されて言われたことをよく覚えていて、すぐに切り替えして聞いているところがなかなか良い。「あるよ。」⑭と言ったので、そのお店の人について行って、お店の人が、「これだよ。」⑮と言うまで、品物を確かめている。「ありがとうございました。」⑯ときちんと店の人にお礼をしている姿勢もこの会話でわかる。相手に親切にしてもらったら、このように自然にあいさつの出来るところは、言われた店の人もたとえ商売でも、言われたら気持ちの良いものである。「はい。」⑰「と言って、行ってしまいました。」と、一言だけでも会話に書いてあることによって、店の人は、忙しいんだなと言うこともこの会話とその後の行動で読み取れる。
「レジにならんで、母からもらった五百円をわたして、ネギは百五円だったので、三百九十五円おつりがかえってきたので、そのお金をポケットに入れてかえりました。」と、ここは会話ではないが、お遣いに行ったらお金をきちんと払って、おつりはいくらと書いているところは、ていねいな書き方である。家に着いてから、母親が「ありがとう。」⑱と言ってくれたことを、きちんと覚えていて会話の形で書いている。短いひとことであるが、子どもにとってはうれしいお礼を込めた励ましの言葉なのである。最後に百円をあげなくても、家事労働をしてくれたことに対して、感謝の言葉でおしまいになっていたら最高だった。
 この文章から会話をとってしまったら、何のおもしろみもない説明だけの文章になってしまう。会話というのは、おつかいという出来事を、母親に頼まれてからお店に行き、そこでの店の人とのやりとりをしながら、やっと頼まれた品物を買うことが出来た。会話があることによって、時間の経過が順序を追ってわかる。会話を通して、人と人とのそのときのやりとりから、親子の関係、店の人との関係もわかる。お願い事や人に頼んだり、聞いたりするときには、必ず会話をしなければ、相手に伝わらないこともわかる。また会話で頼まれたり、たずねたりする中に、しゃべり手の気持ちや心の中まで読み取ることも出来る。

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