子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

日記指導の勧め

日記指導の勧め

自主的な指導と、意図的計画的な指導の二つを柱に、子どもの文章表現力を高める。
2013年 12月24日(火)
品川区立N小学校校内研究資料

日記指導のねらい(自主的な指導)

①ひとりひとりの子どもを知るために
②継続的に子どもの生活を知るために
③ものの見方・考え方を深めるために
④文章表現力をゆたかにするために
⑤個性を伸ばしゆたかにするために
⑥子ども自身の発達のために
⑦教師の考えを知ってもらうために
私の子どもへの寄り添い方   それは日記指導から
◇ まず、書くことへの関心を仕向ける・・・・・・それは保護者会でも強調する。
子どもたちは、一斉指導から・・・・・『何を、どう書いていけば良いのか』を教える。
何をは、題材指導であり、どうは、記述指導である。

日記指導は、きわめて具体的に教えていく。

・高学年は、最初は百五十字マス程度の作文帳を一斉に買わせる。
・日付や曜日は、必ず書いたその日に書く。
・題名は、場面を切り取らせる意味でも、書かせる。(読みたくなる題名を!)
上から三マスあけて、四マス目から書く。
・書き出しは、一マスあけ二マス目から書く。
・その日にあったこと、二、三日間での間に起きた出来事の中で心の中に残った事を選ぶ。
・最初は、一斉に同じテーマで書かせたりする。 
 このような指導は、日記を書かせる基本的なことである。こういうことさえ指導されずに、 進級して来る子どもたち、クラス集団がある。この指導を受けてなければ、高学年になっても、 原稿用紙に向かっても、何も書けないのである。このようなことは、一斉指導で、教えていく 必要がある。
 次のキーワードは、大きな模造紙に書き、一年間教室の目立つところに張っておいて もよい。また、日記帳の最初のページに全員が貼っておき、文章を書く前に必ず目を通 してから始めるとよいと勧める。

文章を生き生きと書く八つの大事な事を、具体的に教える。

①身のまわりの出来事で、心が動いたこと(ある日のこと)をえらぶ。
②したことの順によく思い出して「・・でした。」「・・・した。」と書く。
③いつ、どこで、誰と何をしたかがはっきりわかるように書く。
④その時、自分が話したり、相手が話したりコトバは「・・・・・・。」 を使って文にする。
⑤その時、思ったり、考えたりした事は、(・・・・・・。)を使って文にする。
⑥その時の動きや、まわりの様子にも気がついたら書くようにする。
⑦良くわからない所(自分はわかっていても、読み手がわかるように)は、説明も入れる。
⑧必要な時は、ものの形や色や大きさ、手ざわり、においなど五感(官)を働かせたことをよく思い出して書く。

とりあげるポイント・どんな赤ペンを入れるか。

(1)書いたことをほめる。
(2)一つのことを書いていることをほめる。
(3)題(だい)のつけ方をほめる。
(4)めったにないことを題材に選んだことをほめる。
(5)自分の気持ちを素直(すなお)に書いていることをほめる。
(6)したことをしたとおり書いていることをほめる。
(7)聞いたこと、話したことを書いたことをほめる。
(8)まわりの人のことを書いたことをほめる。
(9)いつ、どこで、だれと、どうした話かはっきり書いたことをほめる。
(11)読む人のために説明(せつめい)していることをほめる。
(12)心のはたらかせ方をほめる。
(13)表現技術(ひょうげんぎじゅつ)が生かされていることをほめる。
◇子どもたちが書いてきた作品は、出来るだけ早く赤ペンを入れて返す。出来るなら、 その日のうちに返す。出来たら、その中の作品を、一人か二人のものを取り上げる。取り上げるときは、その子の書きぶりと生活のしぶりの良さを大いにほめて返す。時間がなければ、次の日の朝の時間帯に取り上げる。教師の余裕があれば、子どもの作品を印刷して、一枚文集にして継続して配布すると、表現力は、格段と高まる。(作品参照)
■教科書から学びながら、日記指導で子どもの生活を広げ賢い子どもに育てる。
★日記を書いて得をした気持ちにする。次の文章は、文字を覚えた一年生の七月頃の作 品である。
 きょうのあさ、あさがおをみにいったら、しろいあさがおが、一こさいていました。つるがでないのに、はながさいていたから、びっくりしました。
 このような文を書いてきたら、自分のした順に、「…でした。」「…ました。」と、過ぎ去った書き方になっていることを大いにほめる。いつのことかが書けている。色のこと、数のこともきちんと書けている。つるが出ないのに、花が咲くこともあるという発見をした、この子の生活のしぶりも大いにほめておく。

 このような視点で赤ペンを書いて返すのも良い。時には、クラス全体の前で、読めばさらに効果的である。学級通信や一枚文集などに載せて、書き手の生活に対する積極性を学び合えば、クラスの子ども達との共感・共鳴する心も互いに育つ。
 この作品を通して、この子ども並びにクラス集団が物の見方考え方が大きく飛躍したことになる。また、その表現の仕方も学んでいる。同時に、この書いた子ども自身が大きな自信を持って、これからも意欲生・積極性を持って、これからの生活を送っていくに違いない。日記への取り組みも、同じように広がっていく。それは、クラスの他の子どもたちも同様である。

自分から進んでお手伝いや、仕事を見つけて、取り組んだことを認める。

 きょうすみだこうえんからかえってきたら、せんたくものが山になっていました。おかあさんは、いそがしそうでした。だから、たたんであげました。しきふはむずしかしかったです。おかあさんは、とてもよろこんでいました。
 どこからかえってきたかが、かけています。そのあと、せんたくものが、やまになっていることにきがついています。やまざきさんのめが、ひかってかがやいていたから、すぐきがついたのです。おかあさんが、いそがしそうにしていることにも、きがついています。やっぱりめがいいんです。どんなふうにいそがしそうだったのかが、かけていると、もっとよかったです。そのあとが、またすばらしいのです。すぐにたたんでやるんですね。しきふをたたむのがむずかしかったのね。おかあさんは、どんなふうによろこんでいましたか。
 このような赤ペンを入れたあと、この子が、自分から進んで行動した自主性・積極性・意欲性をしっかりほめてあげることも忘れてはならない。

学校での友達や教師の話から、すぐに実行して、確かめたことを大切にする。

 きょう、がっこうからかえって、うちへかえって、こっぷをにこだして、つちとすなをべつべつにいれました。みずをいれてぼうでかきまわして、もういいなとおもって、ぼうをとってずっとみていたら、すなのほうが、さきにしずみました。
 理科の時間の学習を、うちへ帰って実験をしている文である。そのようなきっかけのことが、文の最初に書いてあれば、もっと良かったという赤ペンを入れてあげる。しかし、うちへ帰ってすぐに行動にうつしている生活のしぶりを大事に取り上げたい。
 二つのコップの中の水をかき混ぜている途中のことが書けていない。最後にどちらの水が早く透き通ったのかも書けていない。その書きぶりについても、指摘してあげたい。
 この文章を改めて読みながら、日記がなければ、このようなことをしたことをみんなで読み合い学習することもできない。難しい言い方をすれば、教科教育と生活綴方(作文)の関係が成立する。前回指摘された学校教育で学んだことを、生活者である子どもが自分の目線で意欲関心のもとに、働きかけた出来事を文章にしたものである。ここに意図的計画的な指導と、自主的文章(子ども自らが選び出した題材)との接点が成立する。日記指導をしていなければ、このような文章は出てこない。
★目・耳などを五官を働かせて、生活のしぶりを生き生きとさせることを大切にする。
一年生の終わり頃の、三月に書かれた作品である。

おじいさんがおそばを作っていたこと

 きのう おとうさんとおねえちゃんといもうとののりことわたしであさくさにいきました。おなかがすいたので おそばやさんにはいりました。そこのおみせは ラーメンのおそばをじぶんでつくっています。わたしはいすにこしかけて つくるのを見ていました。白いこなを手でまぜてねっていました。そして、なわのようにほそくして なわとびのようにまわして、だいの上で「ドンドン」と音をだしてぶつけました。おじさんのかおをみたら、あせがおでこにありました。ほうちょうでほそくきってまるめて、おなべの中にいれました。わたしたちがたのんだラーメンが、できあがりました。おそばの中は、わかめとおにくがはいっていて、おいしかったです。
 ラーメンのおそばを作っていることに、すぐ気がついたのですね。白いこなを手でまぜていたのですね。なわのようにほそくして、なわとびのようにまわしていたなんていうかきかたは、すばらしいぞ。じっと見ていたからこういうふうにかけたんだね。音をだしたことにも気がついたね。耳を働かせていたことが、わかるね。おじさんのかおをみたら、おでこにあせがでていたのね。これも、まわりのようすに気がつくいい目をもっていたからかけたんだ。一つのことを、じっくり見つめていると、いろんなことに気がつくね。
 この作品も、学校教育では学習できない家に帰ってからの出来事が、ていねいに書かれている。日記(作文)では、固有名詞で物事をとらえることが大切であると、子どもたちに常々言ってきた。ものやこととの関係が、読み手にもしっかり意識化して伝わるし、自分自身の認識のしかたが深まるからである。昔から「認識と表現の統一」と言って、大切にされてきた。「認識」することは、脳みそを通して、じっくり記憶されることである。そのためには、「気づく」ことが大切になる。五官(五感)が生き生きと働いていなければ、「気づき」は弱くなる。つまりものやことに積極的に働きかける生活態度・姿勢(認識のしかた・操作)がいいかどうかと言うことになる。「生活のしぶり」が良いほど、「気づき」は深まり広がっていく。
 わたしたちは、それを「表現可能な根拠」として、作品の部分の中にも優れた表現につながる「生活のしぶり」の良さを考え分析してきた。それを作品に即して、

常へいぜいの生活のしぶり 

その時々の体や心の動かし方・行動と分けて作品を吟味してきた。

 この作品で言えば、家族で店の中に入り、ラーメンのそばを作っていることに気がつき、じっと観察しているのは、「常へいぜいの生活のしぶり」がいつも生き生きしているから、このときも自然にそこへ目がいったのである。
「白いこなを手でまぜてねって」いたり、「なわのようにほそくして なわとびのようにまわして、だいの上で『ドンドン』と音をだしてぶつけ」ていたり「おじさんのかおをみたら、あせがおでこに」あることに気がついたのは、「その時々の体や心の動かし方・行動」が生き生きと働いていたから、このように表現できたのである。
☆意図的計画的な指導・授業で一斉指導
■「何を」(題材)「どう書いていくか」(記述)の指導を具体的に指導していく。作文(日記)で大切にしたいのは、題材を自分で見つけることである。「選びとらせる」ことが、もっとも大事になる。最初は、誰でもやるような体験を課題にして、それを一斉に書かせて、できあがった文章をみんなで読み合うと、次の作文に大きな飛躍がある。
■「おつかい」や「お手伝い」の文章を書かせて、みんなでその文章を読み合う。

「おつかいのこと」  三年 土井 ゆかり

 どんな出来事でも、「きっかけ」がある。文章は、きっかけから書くように指導する。場面の切り取りも、きちんと出来る。買い物をするときには、お金がかかる。そのお金のことも、丁寧に思い出して、具体的に書く。自分や相手の会話を意識して書く。結論をすぐに書かずに、途中経過を丁寧に思い出して、書いていくことが、「いきいきとした文章」になる。
■日記指導のスタートのために使う作品 高学年の場合

「木へんに秋はなんと読むの」 5年  深澤 良信

はじける芽90号
(日書・教科書5年上))
題材・取材のしかた。・・・人間・自然・世の中のこと(社会)
生活のしぶり・書きぶりの違いをこの文章から考え合う。
・・・一時間の授業。
同じように、家に帰ってみんなもさっそくやって、その事を日記に書いて見よう。  

漢字クイズ        5年    別紙プリント

指導題目をたてた授業
 新しい学年になり、新たな気持ちになって、心に強く残ったことを、日記に書いてみよう。日記は、その日にあったことや何日間かの出来事を思い出して、その中から心に強く残ったことを「えらびだして」書いていくことだ。自分から「選び出す」と言うことに値打ちがある。つまり、場面を「切り取る」と言うことも大事だ。したがって、どこから書き出すかと言うことも、当然大事になってくる。一番書きたいことをきちんと書くと言うことができるからだ。そのためには、「読みたくなる題名」をつけることが、書きたい主題意識につながっていく。
◇ まず担任発表をした始業式の日の出来事を書かせる。
○年生になった日の出来事を書かせる。・・・思いおこしをさせる。何に感動したかを確かめる。
○年生になってと言う決意文は決して書かせない。・・・最初は、思い起こしの文が大切で ある。
■三段法で、子どもの作品を時々分析してみよう。
 出来上がった作品をみんなで読み合う。(鑑賞)の授業 低学年
「自然の中で、家族や友達と一緒になって、心に強く残ったことを書いてみよう。」
★「お母さんとぼくで秋をさがしに行ったこと」2年谷澤 秀 
はじける芽51号 
出来上がった作品をみんなで読み合う。(鑑賞)の授業  
高学年
「家に帰ってから、家族や友達見知らぬ人とのことで、心に残ったことを書いてみよう。」
■日記の作品をどう読み合うか。高学年の授業
いくつかの事実を確かめてから、一つの結論を出す
指導題目 「一つの出来事の原因を推理して、いくつかの事実を確かめてから、一つの結論を出してみる。」
浅間山の火山灰 五年 男子 別紙プリント
■米の値段は、パンの値段に比べて安いか高いか。日本の農業の学習の導入として。
★一号カップ分の米の値段  5年 春日 知明
はじける芽128号
■新聞の切り抜きを継続しながら、その感想を書かせていく。その発展として、世の中の出来事に関心を持ちながら、心に強く残ったことを書かせる。
★自分の身近な出来事で、常日頃気になっていることを意見にまとめて、新聞に投稿しよう。

祖父と父のたばこをやめさせたい    新井 正憲  十一才 

 僕の父は、たばこが大好きです。それ以上に祖父も大好きです。一日に二箱以上吸うときもあります。なぜ好きなのかは分からないけど、「パチンコをやめても、たばこはやめない。」と言い張ったほどです。それでも僕は、祖父と父にたばこをやめてほしいです。たばこは人にとって毒だし、本人以外の人にもめいわくだからです。
 たばこの煙りを吸うと、肺が黒く汚れてしまうので、肺ガンになったりします。家の中のカーテンを見ると、いつもうす黒く汚れています。部屋の中だと、煙でせきがでてしまいます。外でたばこを吸っていると、どうしてもポイ捨て等をしてしまいます。それなのに、祖父と父はたばこを吸うので、やめなきゃいけないです。たばこを吸っていると、肺ガンになって死んでしまう人が年々増えています。だから僕がたばこをやめてもらいたいのは、祖父と父に、ものすごく長生きしてくれたらうれしいからです。
毎日新聞 朝刊「読者の声」に載る。

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