子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

作品7.印刷技術の進歩

印刷技術の進歩

二〇〇五.二.二十四(木)
 ぼくが教師になるまで、印刷をするのは、ガリ版印刷というものが、一番広く使われていた。いつから使われていたかは、はっきり知らないが、おそらく百年前から、ずっと使われていたのではないかと考えられる。ぼくの母親も小学校教師で、自分の家でガリ版に文字を刻むことを良くしているのを見て育った。それは、わら半紙の大きさのろう原紙をガリ版の上に置き、鉄筆で字を書いていくのである。ガリ版は、鉄のヤスリがしいてあり、ろう原紙のろうを削っていくのである。だいたい一枚の原紙を切るのに、一時間はかかった。その原紙ができあがると、手製の印刷板にそのろう原紙を張って、一枚一枚ローラーで、上から謄写液を塗って、下のわら半紙に印刷していくのである。その頃四十五人のこどもたちを担任していたので、児童数の印刷をするのに、最低十五分くらいはかかった。ガリ版で字をうめて、印刷にするまでには、一時間は最低かかった。ていねいにやっていたら、二時間近くかかったことになる。

字を間違えたときは

 字を間違えて書いてしまったときが大変である。母がやっていたやり方は、間違った字の上をろうそくのろうをぬった。そのあと、マッチをつけて、すぐに火を消し、マッチの余熱を先ほどぬったろう原紙の上に近づける。すると、そのろうがとけて、間違った字がろうで埋まって修正されるのである。やがて、修正液というものが売られるようになり、そのようなめんどうなことはしないでも、直せるようになった。自分が教師になって、十年近くは、そのガリ版を大事にして、テスト問題を作ったり、子どもの作文や詩を印刷してきたのである。我が家にガリ版で作った文集の合本が、大事にしまわれているが、今では貴重な印刷プリントである。「ガリ版先生」などと言う名前がつけられることは、名誉なことであった。

輪転機の活用

 やがて、一枚ずつローラーで印刷するのは、時間もかかり手もよごれ、つかれるので、輪転機が発明された。これが使われるようになり、十五分くらいかかった印刷が、二~三分で五十枚くらいのわら半紙が出てくるので、その当時の教師は、みんなその機械を見て、感嘆の声を上げたものだった。やがて、リソーという会社が、「手書き印刷」というものを発明し、学校現場に購入されてきた。オレンジ色のコピー用紙がついていて、じか書きの字の上にそのオレンジの紙をかぶせて、機械にかけると字が印刷されるのである。しかし、その字は、あまりきれいに出なかったので、それほど、使われずに終わってしまった。

コピー機の導入

 今から、二十五年くらい前に、今使われているコピーほど様々な機能はついていなかったが、コピー機が入ってきた。その当時の教員は、ここでも驚いたのである。今は、当たり前にやっている本を開いて、そのページをそのまま印刷できるところを見て、「印刷の技術もここまで来た」と、たまげたものである。やがて二十年ほど前に、ワープロを使う仲間が出てきて、その技術の内容を聞いてやはり驚いた。しかし、ぼくは、子どもの作品は、手書きが大事であると考え、ずっと拒み続けてきた。

ワープロからパソコンへ

 今から八年ほど前に、ワープロの技術のすごさを知り、とうとうそれを使うようになった。一番使いたくなった理由は、一度書いたものが、保存がきくと言うことであった。ワープロを五年ほど使い、少しずつその機能を覚えていった。しかし、前の職場に、パソコンの達人の方がおられて、その方の勧めによって、ついに現在も使っているパソコンを使い始めた。ワープロとちがうところは、インターネットを使うことができることが、一番気に入っている。まだ、様々な機能があるようだが、今のところ、文章を書きそれを保存できることに満足している。また、その文章を相手先に送ることも覚え、ますますその便利さに感動しているところである。それにしても、私が教師になって、三十六年間の間に、文章を書き、それを印刷する技術がすごい進歩で、進んできたと言うことは、目を見張るものである。年賀状などは、パソコンでやれば、なかなかいいものが短い時間で簡単にできあがることも覚えた。

手作りの味も大切

 年賀状だけは、手作りの方が味が出ると思い、「版画」を忙しい暮れにほって、二百枚くらいは、刷るようにしている。

ゆとりがなくなった

 これだけ印刷の技術が進んだから、時間の短縮になって、もっとゆったりとゆとりが出できたかというと、三十年前の方が、もっとゆとりがあり、学校の中ものんびりとしていた。こどもたちとの生活も、のどかなものがたくさん残っていた。学校現場が、こんなに忙しくなってしまったことは、いずれにして、良い傾向ではない。何で、そんなに忙しくなってしまったのだろうか。世の中全体が、スピードアップしてきていることもその原因であろう。管理と締め付けがきびしくなってきている。大変勤めずらくなってきた時代である。その中でも、こどもたちの心や体は、昔も今もいいものが一杯残されていることが、ぼくにとっては、幸せなことである。

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