子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

綴方理論研究会 9月例会(2017年)

綴方理論研究会 9月例会(2017年)

工藤さんかまとめた、例会の案内状が、大変丁寧な記録を取っているので、それも載せておく。

講義・「とつおいつ93」(乙部武志さん)

 前回、『近代日本教育の記録』(浜田陽太郎、石川松太郎、寺崎昌男、3人の編集による上、中、下、3分冊の本)のうち、「中」の本から、「峰地光重」について書いてある部分を取り上げて話をしたことに関連してつぎのような話がありました。前回の講義終了後に、その『近代日本教育の記録』(中)をみんなが順に見せてもらったのですが、片桐さんがこの本の中に、信州の白樺教育に関係のある資料を見つけたようで、このあと乙部先生にことわって、その部分をコピーしに行ったということの紹介がありました。それに関連して、乙部先生から白樺派の中心人物、信州白樺教育にも大きな影響を残した武者小路実篤の名があがり、「新しき村」の話が出ました。「新しき村」というのは武者小路実篤他、白樺の同人たちが宮崎県に土地を求めて作った共同体。後になってダム建設のため、共同体の農地が水没することになったため、一部が埼玉に移転。残りは、「日向新しき村」として存続し、今も残っているようですが、乙部先生、以前用事があって宮崎県に出かけていった時、地元で作文研究で活躍していたご夫婦が「ご案内しましょう」ということで自動車で案内してくれたところが、実は、「新しい村」の跡だったとのこと。乙部先生、自分の持ってきた本が片桐さんの役に立って良かった、重いものを持ってきた甲斐があったと話していました。
 今回も重い本を何冊も持参(主なもののみ記録します)。
①『ちちははのくにのことば』(国分一太郎 晶文社 1982年10月20日発行)
② 百田宗治編『日本児童詩集成』(解説 吉田瑞穂・巽 聖歌 川出書房)
③『こどもの綴方・詩』(坂本 燎 創元社 刊)
④『日本児童文章史』(日本女子大学附屬豐明小學校主事 実踐國語研究所委員長  西原慶一 著 東海出版社 1952・昭和27年12月15日発行)
⑤『反権力の証言 市民が追究する』(富山妙子編 合同出版 1971年)

①に関して。7月15日、16日の第13回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会(山形)、
ご事情があり今回乙部先生は不参加。理論研から、山形で初めて「生活綴方運動の一つの里程標」と題する発表をすることになった添田さんに、激励の意を込めてということで乙部先生から、『ちちははのくにのことば』、国分一太郎の落款と署名の入ったものの贈呈がありました。
②③に関連して話されたのは、児童詩教育がどういう流れで盛んになっていったのかに関して。児童詩を研究する様々なグループができ上がっていく中、③の『こどもの綴方・詩』の著者の坂本 燎について、「きりん」という児童詩の本を産みだしていくグループの中軸になった詩人だったという紹介がありました。
④『日本児童文章史』に関しては、以前、紹介のあった滑川道夫の『日本作文綴方教育史(1 明治編)』との書き方との違い。滑川道夫の文章史は、自分の考えを中心に展開した著書であるのに対して、『日本児童文章史』の方は、全体を見渡しながら、資料を引用しているところに特徴があるのではないかと分析されていました。
⑤神田の神保町の古書店巡りをする中でみつけた本のようです。国分一太郎の名が出ているのと、中を見ていくと若狭蔵之助が秩父困民党について書いているのに惹かれ、購入を決めたとのことでした。
この本の編者の富山妙子。少女時代を満州で過ごした人で、絵描きさん(画家)とのこと。インターネットで調べたところ、
富山妙子
 1921年神戸市生まれ。少女時代を旧満州、大連とハルビンで過ごす。戦後、炭鉱、第三世界、韓国、戦争責任をテーマに制作。近年の主な展覧会『富山妙子・記憶のコラージュ』ノースウエスタン大学(USA、2004年)、『大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ「富山妙子全仕事展」(2009年)、『植民地と富山妙子の画家人生』(東京YWCA、2010年)。自伝『アジアを抱く 画家人生 夢と記憶』(岩波書店)、画集とDVD『蛭子と傀儡子 旅芸人の物語』(現代企画室)。
といった記述( http://www.aya.or.jp/~marukimsn/kikaku/2016/tomiyama.html 
があり、現在も活躍中のよう。

 この本の内容がどのようなものか分かる「目次」の部分を記録します。

目次
はじめに  なぜ戦争はふせげなかったか  富山妙子
この本の内容がどのようなものか分かる「目次」の部分を記録します。
Ⅰ 農民の蜂起
  秩父困民党  井上幸治
  秩父事件における革命思想の展開  若狭蔵之助

Ⅱ 階級闘争のなかで
  彼らの歌った歌  山辺健太郎
  弾圧のなかを生きる  大原勇二

Ⅲ 国境を越えて
  在米日本人の反戦運動  石垣綾子
  尾崎・ゾルゲ事件の意味するもの  風間道太郎
  ゾルゲ事件の取調官として  大橋秀雄
  ゾルゲ事件に連座して  河合貞吉

Ⅳ 知識人の抵抗
  国定教科書と綴り方運動  国分一太郎
  宗教家の抵抗と挫折  堀光男
  横浜事件  青地晨
           宮城節子 青地晨 今井清一
〈座談会〉天皇制 犬丸義一 近藤完一 柴田喜世子
             (司会)市民連合セミナー
 あとがき 市民に権利の回復を! 市民連合

「はじめに」の「なぜ戦争はふせげなかったか 富山妙子」の部分と「Ⅳ 知識人の抵抗」の項の「国定教科書と綴り方運動 国分一太郎」の部分((P160~P183)に関しては、コピーをいただきました。富山妙子がなぜこのような本の編者になったのか。さらには国分一太郎の語り口・書きぶり(=どれも一度は聞いたことのある語り口・書きぶりですと紹介)をしっかりと読み取って参考にしてくださいと、締めくくられて終了しました。

◇提案 「文詩集、『作文と教育』の自己流整理」(仮題)
     ~日本作文の会 第66回 全国作文教育研究大会 2017 福島大会
の分科会に提案する内容の概観~   日色 章さん
◆日色さんがこれまで取り組んできた「仕事」の中身が紹介されました。先人たちが綴方教育の発展のために、どのような努力をし取り組みを続けてきたのか。それを明らかにしながら、今後に役立つ資料にしていく。そのあたりが日色さんの出発点だったようです。そのために日色さんがやってきた作業を簡単にですが整理してみたいと思います。
(1)それまで発行されていた年刊文詩集を集めて、作品、作者、指導者、学校名の一覧を作成。散文で4294点、詩で7167点の資料ができる。この作業の中、この文詩集を発刊する意義を説いた「前書き」、選者の選評などから学ぶこと大であったと話していました。
(2)『作文と教育』の主要な論文、実践をコピーする。論文、実践のコピーの数は、
10217点。A4版149冊分になる。ページ数、3万ページ。
(3)上のコピー集の目次「ひとあしひとあし」を作成(A4版480ページ)。
(4)創刊号からの目次の部分のみ集めてコピー。その号がどういう内容が取り上げられているか一目で分かるようにする。3冊の冊子となった。
(5)研究者、実践者ごとのコピー集(個人文集)を作成。79人分、125冊となる。79人、125冊がどのようなものか分かるように目次を1冊(=「あしあと」)にまとめる。

その他、今現在、「推敲について」「原点を探る」などの「テーマ」ごとに、どういう論文があるかまとめだしていること。国分一太郎の学芸大講義ビデオの作成、『なにを、なぜ、はげましてやるか』、『みどりの風の吹く中に』その他まとめをしてきたことなども紹介されました。
話し合いでは、限られた時間の中でどこに話を絞って報告をしていったらいいのかに関して様々な意見・アドバイスが出ました。「前書き」を前面に出す。前書きでどういうことが強調されているかの紹介だけでも、中身の濃いものになる。「前書き」で強調されていることをきっかけに上記=(1)~(5)のような資料を作成したという紹介、それの紹介だけでもすごくいい。武田さんに指導されて出てきた作品を具体的に読み合うのでもいいのではないか等、どこから切りこんでいったらいいかに関し論議が続きました。
(文責:工藤)

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