子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

10月11日(火) 国分さんの詩

10月11日(火) 国分さんの詩

   接(つ)ぎ木
接ぎ木とは、
おそく花さく木を早くさかせるため
おそく実のなる木に早くならせるため
しぶい柿の木を、あまい木にするため
ちっぽけなリンゴを大きなリンゴにするためこういうふうに聞いていた。

それが、この頃のリンゴでは、
「富士」をならせるため、
「むつ」をならせるため、
「日本一」をならせるため、
「世界一」をならせるため、
みんなが愛してきたところの
「朝日」にも
「紅玉」にも
「国光」にも
「スターキング」にも
新しい接ぎ木が行われている。

金になるもの、
ねだんの高いもの
売れゆきのよいもの
宣伝(せんでん)でみんなが買うようになったもの
それは、やっぱりいいのだそうだ。

人間にはまだ接ぎ木と言うことがないので
本当によかったなあ。
人間に接ぎ木と言うことがあったなら、
おれは、どういうことになっていただろう。おれはおれで こんな子で、
ねだんの高いものでもなく、
売れゆきのよいものでもない。
宣伝して
どこのだれもが、買ってくれるようなものでもない。
人間の接ぎ木を発明する学者など、
どうか 出ないでくださいよ。

新しい朝に向けて
 新しい朝がまためぐってきました。昔 は、「新たな気持ちを持って」張りつめ た思いを持って迎えました。最近は、ま た一才年を取ってしまうなという気持ち が強くなりました。そんな思いを消し去 ってくれるのが、年賀状です。今年もたくさんの教え子から、賀状を戴(いただ)き、あ りがたく読ませて頂きました。担任して いるときに出して、卒業してから来なく なる年賀状があります。ぼくとしては、 担任中は、いつでもすぐに会えるのだか ら、むしろ離れてから近況を書いて下さ るのが、大変ありがたいのです。ところ が、この頃は、その逆で、離れてしまう と「はい、さようなら」と、終わりにな ってしまう子がいます。
 その中で、一番多く来るのが、最初の教え子からのものです。もう子供が中学生になっている子もいます。医者、警察 官、教師、スナックのママ、お寿司や、ビデオ会社社長など、バラエティーに富んでいます。その子どもたちが、昨年三 十数年ぶりに同窓会を開いてくれました。クラス会は、五年に一度開いていたのですが、同学年は、卒業以来初めてでした。みんな立派になっていて、感動の ひとときを過ごせました。教え子とはありがたいものだと、その時も感じました。「教(きょう) 師冥利(しみょうり)に尽きる」とは、こういう 時ではないかと改めて思いました。200枚以上の年賀状の半分以上は、教え子からのものです。ぼくは、毎年版画を彫っ ています。忙しい学期末と重なるのです が、これだけは、印刷のものより暖かみ があると思い、子供時代からずっと続けてます。
 さて、新聞やテレビのニュースは、ク ローン人間の誕生を取り上げていました。三十年以上前に、国分一太郎先生は、上のような詩を書きました。先生は、日本作文の会の役員を長らく務めておられ ました。先生の書かれた「新しい綴り方教室」を二十代の時に読み、以来作文 教育を大切にして歩いてきました。
 本年もよろしくお願いいたします。

昔の1枚文集より

 国分さん作の詩の中で、私の好きな詩だ。現役の頃、3学期の最初の一枚文集でこの詩を載せて、新年のあいさつを兼ねて、子どもと保護者に向けて、発信したものだ。2003年の1月発行のものだ。今から13年前に書かれたものだ。

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