子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

10月17日(月) 内田宣人さんの訃報

10月17日(月) 内田宣人さんの訃報

 私が墨田区へ異動しようと決めたのは、この方の都教組大会の総括討論を聞いて、その迫力ある発言の仕方に感動して聞き入っていたのである。その方の名は、内田宣人さんである。墨田教組の委員長をされていた。その内田さんの訃報が、今日伝えられた。    1927〈大正15〉年生まれであるから、90才でなくなられたのであろう。東京の教職員組合の中では、もっとも原則的に闘う組合であった。1974年の日教組の半日と1日の全国ストライキを貫徹した。見事な闘いであったが、そのあと、警察の弾圧があり、何人かの委員長書記長が逮捕された。当時私は、豊島区の執行委員をしていたので、目白警察が尾行していた。埼玉の浦和の実家まで来て、「息子さんは、いらっしゃいますか。」調べに来たと言うことを、あとから母に聞いた。その時、母も浦和市教組で、日教組のストに参加していたので、動揺することもなく、「いません。」と言って追い返したと聞いた。私は、当時1年生の担任であったが、1週間家に帰らなかった。それというのも、豊島の組合事務所が、警察によって家宅捜査された。また、豊島の大広委員長の自宅にも、警察が来て、玄関を開けろと押し問答があったようだ。その時に、委員長の大広さんと、書記次長の田子さんと私の3人で、自宅までタクシーでかけつけて、警察の家宅捜査に立ち会ったりした。また、都教組の平野書記長が、目白警察に逮捕されているというので、連日警察まで行き釈放するように、多くの組合員と一緒に行動していた。私は、警察署の前で、職場にあった「おまわりさんの仕事」という紙芝居を、大勢の組合員の前で見せた。「皆さん、おまわりさんの仕事は、先生を弾圧することも仕事に入れなくてはなりませんね。」と演説したら、多くの組合員が「そうだそうだ。」と言って、拍手喝采してくれた。また、夕方になると、目白警察に電話を入れて、「なんだか学校の先生が逮捕されていますが、どうしたんですか。」と保護者のふりをして、警察に文句を言ったりした。とにかく、釈放されるまでに、かなりの日数を要した。
 しかし、今でも忘れずに残っていることがある。それは1974年4月25日の赤旗に今回のストライキは、無理があったと「ストライキ否定路線」が書かれたのである。今まで、早朝29分集会でも何でも、みんなでまとまって集会に参加してきたのであるが、これを機会に、日教組はストライキが打てなくなってしまったのである。
 そんな中で、墨田教組は、内田委員長を先頭に果敢に闘い続けた。教員に主任制度を導入するという法律が通されたときに、墨田教組だけで単独早朝2時間ストを打ち抜いたりした。東京の中で、墨田だけである。その時に、都教組本部は、墨田の切り崩しにかかり、このストはやるべきではないと妨害した。しかし、最後まで、組合はまとまりストをやり抜いた。そのために、墨田の中には、主任を暫く置かない学校が7校くらいあった。たとえ置いても、校長の命令でなく、民主的に選んで決めたりした。私が勤めていた学校は、主任を置かない学校であった。連日校長と、組合員全員が団体交渉をした。残る7校は、見事であった。最後まで校長の提出を拒んだのである。私は、当時分会長をしていたので、連日執行部と連絡を取っていた。その時に、夜の11時過ぎに電話をしても、執行部は必ずいて、「もう少しがんばれ。」と激励してくれた。その中心に内田委員長がおられたのである。

国分さんを尊敬していた内田さん

 内田さんは、国分一太郎さんを大変尊敬しておられて、組合の教研集会には2度ほど国分さんを招いて、「記念講演」をお願いしている。国分さんが、亡くなられたときに、職場から、組合事務所に連絡したのも、内田さんが専従でおられたからである。「そうですか。残念。」と言って電話を切られた。やがて、毎週1回出している組合の新聞「週刊墨教組」に国分さんの訃報の文章を内田さんが書いて下さった。「国分さんとの別れ」という題だった。やがて、この文章は、「北に向かいし枝なりき」〈国分一太郎追悼文集〉P150に載っている。国分さんを慕っているところが至るところに出てくる素敵な文章である。やがて、「こぶし忌」があることをお誘いしたときに、用事があり行かれないと言って、丁寧なお手紙を書いて下さった。その手紙の中に、国分さんを慕った短歌を添えて下さった。内田さんは、短歌もすばらしく、「朝日歌壇」の選者近藤芳美の第1席に選ばれることが何度かあった。謹んで、内田さんのご冥福をお祈りしたい。

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